松本一生
私たちが経験する悩みの中で、最も深刻なもののひとつに「眠れない」ことへの悩みがあります。私も妻の介護を始めて6年半、毎年のように季節の変わり目になると不眠を訴える妻への対応に追われます。認知症ではいくつかの型の不眠が出てきます。病気でなくても睡眠は深い眠りと浅い眠りとを一晩に何度か繰り返し、年齢を重ねると少しずつ眠りが浅くなります。
不眠を訴える人の多くは「寝ようとすると寝付けない」という形の不眠を訴えますが、それ以外にも夜中に何度も目が覚めるものや早朝に目覚めて、それ以降は眠れなくなるといったいくつかの睡眠・覚醒の乱れが出てきます。
今回のエピソードはアルツハイマー型認知症のために睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなり、そこへ意識が軽く低下する「せん妄」が重なった84歳女性、柳生 隆子(仮名、以下同)さんの話です。
柳生さんは私の診療所のすぐ近くに住んでいましたが、夫を見送ってから10年間、独居を続けていました。娘の松村 敦子さんが自宅から30キロほど離れた実家に通いながら介護を続けてきました。
しかし柳生さんが自宅で転倒し、大腿(だいたい)骨頸部(けいぶ)骨折のため整形外科病院に入院した時から彼女の昼夜リズムが乱れてしまいました。整形外科病棟も努力してくれましたが、病院も人手不足です。やむを得ず看護師長は娘に「お母さんが夜中に騒ぐため個室に移ってほしい。入院を続けるには娘さんが泊まり込んでほしい」と言ってきました。
そうした求めに従いましたが、…
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朝日新聞社会部