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 陶磁やガラス、染織など近現代の工芸作品を専門に扱う「国立工芸館」が東京から金沢市に移転し、25日に開館する。国の機関を地方に移す方針の一環で、日本海側初の国立美術館が誕生する。北陸の地で工芸文化の発信拠点が新たな一歩を踏み出す。

 正式名称は東京国立近代美術館工芸館。工芸館は1977年に皇居そばに開館し、人間国宝の作品のほか、明治から現代までの工芸・デザイン作品を幅広く収集してきた。今回の移転で、明治以降の工芸作品やデザイン作品約3900点のうち、およそ1900点を金沢に移す。その中には1893年のシカゴ万博に出品された金工家・鈴木長吉の銅置物「十二の鷹(たか)」や、近代陶芸の巨匠・富本憲吉の「色絵金銀彩羊歯文八角飾箱(いろえきんぎんさいしだもんはっかくかざりばこ)」など、日本の工芸界を代表する作品も数多く含まれ、25日から始まる開館記念展で一般公開される。残りの作品は東京で保管するという。

 安倍政権が推し進めた政府関係機関の地方移転だが、消費者庁は徳島市への一部移転にとどまり、文化庁が当初より遅れた2022年度の京都移転を予定しているぐらいだ。工芸館の移転では、館長と職員計8人が来春までに東京から移住する。

 24日に開かれた開館記念式典では、名誉館長に就任した元サッカー日本代表の中田英寿さんが出席。「この10年ほど日本全国の工芸の産地をまわり作家と接してきた」といい、「工芸の作家と消費者の距離が離れてしまっている。その距離を縮めることが工芸館の役割だ」とあいさつした。(沼田千賀子)