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 和歌山県串本町の串本海中公園センター水族館は、絶滅のおそれがあるアカウミガメの飼育技術に定評がある。9月、世界で初めて、人工の砂浜で飼育した3代目の赤ちゃんを誕生させた。担当した副館長の吉田徹さん(38)は「研究者の1人として、アカウミガメが絶滅危惧種から脱する手助けになれば、うれしい」

 水族館では、1986年に人工砂浜の産卵場を敷地内に設け、アカウミガメの飼育を始めた。95年に「世界初」とされる繁殖に成功し、日本動物園水族館協会から「繁殖賞」を受賞した。

 センターに就職したのは2006年。千葉県出身で、東海大学海洋学部でサンゴの生態と保護を学んだ。串本町の沖に広がるサンゴ礁の研究を続けようとセンターに入ったが、アカウミガメに出会い、愛らしさに魅せられた。すぐに飼育担当になり、10年に2代目の繁殖に成功した。

 「雑食性なので、なんでも食べる。意外にタフなんです」。成長すると150キロにも達し、寿命は60~100歳と推定される。日本で放流した子亀に標識を着けた追跡調査では、北米の西海岸まで到達したという。「海流に乗って太平洋を横断し、また、日本近海へ戻るようです」

 出産と子亀の成育時は細心の注意を払う。出産シーズンは深夜まで見守り、子亀には小エビなどの良質のえさを与える。成長させて放流する時には体力の消耗を防ぐために船で沖まで運び、黒潮に乗せる。子亀の生存率を高め、絶滅から守るための工夫だ。

 護岸工事などで産卵地が減り、環境省のレッドリストで「絶滅危惧ⅠB類」に指定されているアカウミガメ。生まれた子亀に発信器をつける生態調査も進め、大学などの研究にも協力したいという。「飼育下で世代を重ねる繁殖を続け、ウミガメの保護、研究の一助になれば」(直井政夫)

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