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 県の原子力防災訓練は最終日の24日、柏崎市や刈羽村などの住民約550人が参加して避難訓練が行われた。特別養護老人ホームでの屋内退避や、放射性物質による汚染の有無を確認するスクリーニングなど、多岐にわたる訓練は、おおむね事前のシナリオ通りに進められたが、参加者からは課題の指摘や、実際の事故時の対応を懸念する声も聞かれた。

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 原発から5キロ圏内の即時避難区域(PAZ)にある特別養護老人ホーム「にしかりの里」(柏崎市西山町長嶺)では、すぐに避難が難しいお年寄りを屋内で退避させる訓練が行われた。

 この施設では、一部の区画(陽圧化区画)の気圧を高めて、外気中の放射性物質が室内に入らないようにするフィルトリングシステムが導入されている。

 午前9時25分、原発で原子炉損傷に至る可能性があるとして「施設敷地緊急事態」がアナウンスされると、車いすに乗った入所者役の職員2人とベッド、食料などが陽圧化区画に運び込まれ、扉を閉めた後、システムが稼働された。

 陽圧化区画ではない区画では、80人の高齢者が生活している。山田宥人(まさひと)施設長は、視察で訪れた花角英世知事と桜井雅浩・柏崎市長に「夜間は5人が宿直をしているが、5人ですべての利用者を移動させるのは大変厳しい。行政や地域の皆さんに支援していただかなければならないと思う」と話していた。

 東京電力の職員が同社の福祉車両で、車いすやストレッチャーに乗った入所者を避難させる訓練も行われた。

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 原発から5~30キロ圏内の避難準備区域(UPZ)では、放射線量などの状況に応じて避難を始める。

 糸魚川市の避難所に向かう途中にある直江津港南ふ頭緑地公園(上越市)では、柏崎市枇杷島地区や上越市の住民らが自家用車やバスで続々と到着した。県と協力協定を結んだ東京電力の社員も参加してタイヤや車体の線量を測定し、基準を上回った場合を想定して除染作業を行った。内部被曝(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤は副作用の心配があるため、医師が時間をかけて説明してから配った。

 訓練の前半はスクリーニング検査をより厳しい県の基準で実施したが、後半は県の基準より緩い国の基準を採用した。風向きなどを考慮し大規模な避難が想定される場合、災害対策本部長の県知事の判断で国の基準に切り替え、多くの住民が早く安全な避難所に着くことを優先するためだ。

 今回の訓練では住民はバスで避難したが、実際は自家用車での避難が基本なので交通渋滞も起こりうる。参加した病院職員の女性(68)は「今日はスムーズに来られたが、多くの車が避難するなかでもたどり着けるだろうか」と話した。

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 原発から70キロあまり離れた糸魚川市の「道の駅マリンドリーム能生」では避難所が設けられ、柏崎市内から約80人が大型バスで到着した。

 受付前には検温装置が置かれ、一般の人々が過ごすホールとは別に、新型コロナウイルスに感染疑いのある人や濃厚接触者のための部屋が設けられた。

 PAZの同市荒浜町内会長の小野敏夫さん(75)は「これまで頭の中でイメージしていた避難を体験することができてよかった。少し遠いなと思ったが、放射能から逃れるには、これくらいしなくてはいけないのだろう」と話していた。

 UPZの柏崎市城東町内会長の小菅信幸さん(71)は「誰が自家用車を利用し、誰がバスに乗るのかといった情報収集が難しそうだ」と言い、杖を使って歩いていた海津浩二さん(84)は「体が不自由になると、介護する人も大変だ」と話していた。

 花角知事は「訓練を繰り返し、避難計画の実効性と災害への対応力を高める」と語り、桜井市長は「避難所の受け付けに時間がかかることが懸念される。マイナンバーカードの普及を進めて、カードをかざすことで受け付けを済ますようなシステムの開発を政府にお願いしたい」と述べた。(長橋亮文、戸松康雄)

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