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神奈川リハビリ病院長・杉山肇さんに聞く

 新型コロナウイルスの感染拡大で、リハビリテーション(リハビリ)を担う病院は大きな影響を受けました。体が不自由な人と、そのリハビリをサポートする職員が濃厚接触せざるをえないからです。国内でのコロナ発生当初、私たちの病院はコロナ患者が院内で出た場合の態勢も十分でなく、感染症の専門病床などもないので当惑しました。

 感染が疑われる患者がいた場合、検査結果が判明するまで一般の患者と同じ病棟に入れられないことから、4床あるICUを急きょコロナ疑い患者の対応病床にするなどの対応に追われました。緊急事態宣言が出た4月上旬には、外来のリハビリは中止しました。入院患者の安全を守るためでした。手術の延期などの措置もとりました。

 コロナとは無関係でしたが、急性期病院にいる患者がリハビリを受けるために転院してきた直後、元の病院でコロナ感染が判明したケースもあります。こうしたこともあり、入院時の感染の有無の判断には神経を使いました。本当に「綱渡り」状態でした。

 結局、政府が緊急事態宣言を解除した5月下旬まで外来リハビリを中止しましたが、受診を望む外来患者からは「患者の気持ちをわかっているのか」「病院長はやめてしまえ」などと厳しい言葉も受けました。「感染しやすい入院患者もおり、命を守るためにどうかご理解を」と直筆の手紙を出したこともあります。外来リハビリの再開後は、ガウンや手袋、フェースシールドを装着しました。

 国は、「1メートルほどの距離で、マスクを外して15分間接すれば濃厚接触」と定義しています。リハビリは体の不自由な人を支えながら行いますが、どの時点から濃厚接触になるのか、基準が不明確です。

 作業療法士や理学療法士など、患者に直接触れる業務にあたる人たちには、オンラインで患者にリモート対応できるやり方を構築してほしいとお願いしていますが、有効な手立ては打ち出せていません。「高齢者と同居しており、自分が感染したらうつしてしまう。もうここには居られない」と退職していった職員もいます。

 リハビリは、もろにコロナの影響を受けている診療分野ではないでしょうか。生命に直結関わる医療分野ではないので、外来の通院患者も受診を自粛しているのが現状です。そうなると、せっかく重ねてきたリハビリの効果が薄れてしまいます。

 我々の病院では2017年度から、手先の欠損した人向けに筋電義手(腕の筋肉を動かす際に生じる弱い電流を電極で読み取り、モーターで手指を動かす義手)のプログラムを独自に展開していますが、外来リハビリの中止で患者が来られなくなり、特に影響は大きかったと思います。

 8月から、外来リハビリ全般は平常時の5割程度にまで戻していますが、入院患者数の落ち込みがあるため収入面で厳しい状態です。県も一般財源から資金援助ができない仕組みで、補助金はあるがかさむ一方のコロナ感染予防対策費も含めて、病院の収支が悪化する要因になっています。今のところは大丈夫ですが、今後の経営面を非常に心配しています。

 患者を急性期から回復期へ着実に進ませるのに、リハビリは必要不可欠。病院としても、今後も努力を重ねて行かないと生き残れません。リハビリも、外来で長期にわたり定期的に漫然と重ねていくのではなく、患者の練度が一定の域に達したら社会や家庭に戻ってもらい、状態が悪くなればいつでもリハビリを再開できるというメリハリの効いたやり方にする必要があると感じています。

 医療界全体に通じることだと思いますが、医療の本当に必要な医療分野はどれで、それにはどのくらい人員がいるのかを考え直す時期に来ていると思います。その上で、適切な場所に医療人材と財源を「再分配」するべきではないでしょうか。(取材・構成 岩堀滋

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 神奈川リハビリテーション病院 1973年、脊髄(せきずい)損傷や脳外傷などの治療と社会復帰に向けた訓練の場として開設された。手術機能も含む多くの診療科による総合的な診療が可能。県立施設としてオープンしたが、2006年に指定管理者制度を導入、以後は社会福祉法人神奈川県総合リハビリテーション事業団が管理・運営している。