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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は4月7日、7都府県に特別措置法に基づく緊急事態宣言を出した。

 13日、県と宇都宮市に寄せられた電話相談は初めて1千件を超えた。栃木市の60代男性は、小山市の県南健康福祉センターに電話をかけた。「37~38度台の熱が5日続いている。胸痛や下痢もある」

 それでも男性はPCR検査に回されなかった。男性は翌日に医療機関を受診した。この医療機関から連絡を受けたセンターがようやくPCR検査を手配し、陽性と判明した。

 県職員の一人は「早く検査すべきケースだった」と言葉を漏らした。

 この日、県南健康福祉センターには約200件の相談が集中していた。これほどの件数は後にも先にもない。朝から晩まで電話が鳴りっぱなし。12人の保健師のほとんどが電話にかかりっきりだった。

 当時、現場のセンター保健師らは、医療機関から要請がない場合、PCR検査には回さないと内部で取り決めていた。職員は「相談件数が多すぎて、私たちでは判断できなかった」。

 ほかの県内4カ所の健康福祉センターでも同じだった。県はそうした内部運用を県民に知らせなかった。県民は「センターに相談してもPCR検査が受けられない」と不安を募らせた。

 PCR検査業務や、感染者の濃厚接触者の追跡にあたる各健康福祉センターの保健師は計77人。16年前の福田県政発足当時の74人とほぼ変わっていない。新型コロナが広がる前から仕事量が多すぎて「パンク寸前」(県職員)。県幹部は「保健師の負担が過大になっているところに新型コロナが発生した」と話す。

 福田富一知事が就任した2004年以降、自殺や新型インフルエンザ、引きこもり対策が次々に保健師の業務に加わった。2000年代から取り組む介護問題や児童虐待、ドメスティックバイオレンス(DV)の防止に関する業務もますます増えていた。

 県内の健康福祉センターに勤務する保健師の業務量は膨らみ、複雑化した。秋冬に新型コロナが再び大流行すれば、保健師が多忙を極めるのは明らか。保健師の業務の見直しは県幹部も課題と認識する。

 業務量に応じて保健師を増員したいところだが、県職員の削減を進める「行政改革」の流れが立ちはだかっている。厳しさを増す県財政状況に応じて、県は1990年代半ばから、一般行政部門の職員の削減に努めてきた。

 04年に5108人いた県職員は、10年後の14年に4328人まで減った。その後は横ばいで20年は4329人。人事課の担当者は「これ以上減らしたら業務の執行に問題が出る」と嘆く。昨年度、1人当たりの残業時間は年平均167・8時間。国が進める「働き方改革」に逆行し、前年度から26・5時間増えた。

 県は昨年、単純作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入した。生活保護費の支給業務では年300時間超の作業時間の削減を見込む。今年度は情報通信技術(ICT)活用で業務の効率化を進める「行政改革ICT推進課」を新設した。

 だが、人と人が関わり合って仕事を進める健康福祉センターや児童相談所などではマンパワーの不足解消が急務だ。多くの県職員がささやく。「業務と職員配置の見直しは知事の決断が推進力となる」

       =おわり(池田拓哉)