母みとり「死」書けなくなった作家 自由になれた一言
人間は生まれてきた以上、必ず死んでいく――。そんな自然の摂理を、老いた親をみとる場面で実感する人も多いかもしれません。終末期とは。「生きる」とは、命とは何なのか。人生100年時代の今、大切な人との別れを通じて貴重なメッセージを受け継いだ佐々涼子さんに聴きました。
ノンフィクション作家・佐々涼子さんの別れ
「母さんが死んでしまったよ」
佐々涼子さん(52)は2014年夏の早朝、近くの実家に住む父の電話を受けました。その8年前に神経難病と診断され、全身の筋肉が次第に衰え、最後はまぶたしか動かせなかった母。明け方に息をしていないのに同居する父が気づき、佐々さんが駆けつけた家の中には母の気配がまだ漂っていたそうです。享年72。
「つっかけを履いて庭に出るように」、母はあの世への境界を越えた。佐々さんはそう感じました。
ただ、それは父の完璧な在宅介護があってこその最期でした。「朝は母の顔を蒸しタオルで丁寧にぬぐって化粧水で保湿し、毎日2時間の入浴時は全身を念入りにマッサージし、1日おきに下剤を飲ませて肛門(こうもん)に指を入れて便をかき出す。私には到底まねできないと思いました」
「『家が一番』と手放しで礼賛できない」
自分たちの世代は家族の終末…

エイジンググレイスフリー
「人生100年時代」が近づくいま、50歳はちょうど中間地点。変わる身体、働き方、家族との関係……。「Aging Gracefully」(エイジング グレイスフリー)は、家庭や職場、地域で大事な役割を担うミドルエイジの女性たちの「いま」と「これから」を見つめ、自分らしく年齢を重ねていくことを応援する特集です。[もっと見る]