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 「中川幸夫の作品には直線がなく、ぬたぬたしている。どろどろに溶けたガラスに生命を感じ、形にとどめようとしていたんでしょうね」。担当学芸員がこう評すのは、植物が腐り切る寸前に放つ、生と死の匂いに執着した孤高のいけばな作家。そのガラス器に光を当てる展覧会が、石川県能登島ガラス美術館で開かれている。

拡大する写真・図版写真作品「聖なる書」1994年 カーネーション、自作ガラス 撮影:中川幸夫

 33歳で池坊を脱退して流派に背を向けた中川は、「華道家」ではなく「いけばな作家」を名乗った。上空から約20万本分のチューリップの花びらをまき散らした2002年の「花狂」など先鋭的な表現で知られ、陶磁器や竹、石といったさまざまな花器を使ったが、中でもガラス器は群馬のガラス工場の職人たちの協力のもと、一貫して自作していた。

 今展では、12年に93歳で死去した中川がデザインしたガラス器と、ガラスと植物などを組み合わせた写真作品で、既存の生け花やガラス工芸といった概念を超越した造形思考を紹介する。

拡大する写真・図版「生けるガラス―中川幸夫の花器」展の展示風景。ガラス作品「渇いた喉(のど)」(制作年不明、個人蔵)など=能登島ガラス美術館

 中川は花が命を終えていく最後の瞬間を見届けようとした。代表作「聖なる書」では、開いた書物の形をしたガラスが重しになり、腐乱したカーネーションの花弁から赤い汁が染み出す様が、死肉と血を連想させる。竹を使ってガラスを筒状に成形した部分では、内側に高温で炭化した竹が黒く残り、節の跡が動物の背骨を思わせる。

 「中川さんのガラスは花だった…

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