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 タレが輝くアナゴのかば焼き。ぷりぷりっとした歯ごたえと濃厚な旨(うま)み。口中でほくほくとほぐれるほどに香ばしさが鼻孔をくすぐる。ウナギにもまさるごちそうと言っていい。

 島根県大田市沖の山陰の海はアナゴの一大漁場だ。夏場はかご漁、それ以外の季節では底引き網漁が盛ん。2019年の県全体の漁獲高は約600トンで全国トップ(水産庁調べ)。ほとんどが同市と隣の同県浜田市で水揚げされている。一年中とることができ、漁獲高が安定していることも地域の特産として強みだ。

 大田の天然アナゴの特徴は、日本海のエビなど豊富なえさに恵まれ、大ぶりなこと。江戸前として知られるアナゴが体長35センチ程度なのに、50センチ以上の大アナゴが主体だ。身が厚く、脂の含有量も多めでしっかりした食感になるという。

 このアナゴ、調理に時間と技術がいるため地元ではあまり消費されず、もっぱら関西圏に出荷されていた。このため大田市は全国有数の水揚げ量に改めて着目し、数年前から飲食店や旅館と連携してイベントや冊子などで「大田のアナゴ」を特産としてPR。現在は20店ほどで、かば焼きや白焼き、アナゴカツ、しゃぶしゃぶなど素材を生かしたメニューを味わえる。

 同市三瓶町にある国民宿舎「さんべ荘」もアナゴが名物だ。今年は新型コロナウイルスの影響で団体客は減ったが、丼や天ぷら目当ての客足は好調という。フロントの長尾純さん(40)は「一度食べたお客さんの口コミなのか、広島など近隣県の人から『きょうはアナゴありますか』という問い合わせが増えています」と話す。

 料理長の那須代詞(しろし)さん(62)に人気メニューのアナゴ丼をつくってもらう。

 選ぶアナゴは、船上で活(い)け締めし、血抜きをした新鮮なものだけ。こうすることで臭みが抜け、旨みも増すという。包丁で皮のぬめりを丁寧にとり、さばく。湯引き、煮る、焼く、タレつけ、あぶる……。かなりの手間だ。「面倒くさい作業に手を抜かないのが味の決めて。ひたすら丁寧にね」と那須さん。

 できあがったアナゴ丼は身がふんわりと焦げ茶色になって、立ち上る香りが食欲をそそる。関東勤務が長いせいか、アナゴというと寿司(すし)だねであり、煮るイメージだったが、やや印象が違う。一口食べると、焼くことで旨みがふっくらとした身の中に閉じ込められている感じがした。

 那須さんは「天ぷらもいいですよ。それこそアナゴのおいしさが凝縮しています。ウナギの味と遜色ないのが天然アナゴと思いますね」と笑みを浮かべた。(杉山高志)

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 さんべ荘では昼食限定で、アナゴやイカなど魚のカツを使ったバーガー風の「あなGOベーグル」(990円)や、カツをトルティーヤで巻いた「あなGOロール」(660円)も販売。いずれも従業員のアイデア商品。問い合わせは0854・83・2011。

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