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 滋賀は古くからやきものが盛んな土地だ。その代表が甲賀市の信楽焼。「日本六古窯(ろっこよう)」の一つで長い歴史を持ち、土と炎が生み出す多彩な風合いが魅力だ。一方、彦根市の湖東焼は江戸後期の短期間に花開いた。現存数は少ないが名品ぞろい。繊細な絵付けが見事だ。歴史も作風も対照的な二つのやきものの特別展が、両市で開かれている。

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 滋賀県立陶芸の森・陶芸館(甲賀市信楽町勅旨)では、特別展「奇跡の土―信楽焼をめぐる三つの景色」が開かれている。

 信楽焼は、鎌倉時代後期(13世紀後半)に常滑(とこなめ)焼(愛知県)の影響を受け、生産が本格化した。釉薬(ゆうやく)を使わず、高温で焼き締める「焼締(やきしめ)陶器」だ。

 最大の魅力は土。信楽地域にある古琵琶湖層群の陶土はコシが強い。特に焼成で得られる緋色(ひいろ)や焦げなど多彩な色合いと質感は「景色」と呼ばれ、鑑賞上の見どころとされている。

 展示品は89点。三部構成で、最初は室町時代の大壺(つぼ)が並ぶ。常滑など日本六古窯の歴史的な作品も展示し、各地固有の景色を見比べることができる。

 次は米国との交流史。信楽焼の影響を受けた米国の陶芸家の作品を紹介する。

 最後は、現代作家たちの焼締陶器の作品に注目する。黒褐色と赤褐色のコントラストが見事な「炭化線紋鉢」(飯山園子さん作)など、信楽の土の特性を生かしながら、独自の表現を追求した現代アートとも呼べる作品ばかりだ。

 担当者は「中世から現代に続く焼き締めのダイナミックな展開と表現の魅力が実感できる」と話す。

 12月13日まで。月曜休み(11月23日は開館、24日休み)。午前9時半~午後5時(入館は4時半まで)。一般700円、高校・大学生520円。問い合わせは陶芸の森(0748・83・0909)へ。

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 彦根城博物館(滋賀県彦根市金亀町)では、「幻の名窯(めいよう) 湖東焼―彦根藩窯の盛衰―」が始まった。年1回の特別展。湖東焼93点を含む計168点が並ぶ。

 藍色の染付(そめつけ)や赤や緑の色絵、金で彩る金彩といった多様な絵付けが魅力の一つ。城下の商人が1829年に窯を開いて始まり、後に藩が直営化して栄えた。しかし、藩主井伊直弼(なおすけ)が60年、桜田門外の変で亡くなると衰退し、途絶えた。現存品が少なく、「幻のやきもの」とも称される。

 黄金期は藩窯となった約20年間。この間に瀬戸(愛知県)や九谷(石川県)、京都などから一流の陶工を集め、極めて高品質な作品を生み出した。

 展示品のうち、「赤絵(あかえ)金彩(きんさい)柳翡翠(かわせみ)図建水(けんすい)」は東京の井伊家に伝わった茶道具の名品だ。名絵付(えつけ)師・鳴鳳(めいほう)の作品で、胴部に水面を見つめるカワセミと柳が描かれている。全体に黒ずみが残るのは、邸宅が関東大震災の火災に遭ったためだ。

 「赤絵金彩張道陵(ちょうどうりょう)図鉢(ばち)」は九谷と湖東の2人の絵付師の銘があり、九谷焼との関連を示す。会場には湖東焼に影響を及ぼした各産地の名品も並ぶ。

 担当者は「湖東焼の特色、歴史、名品のすべてを網羅した決定版の展示となった」と話す。

 11月23日まで。無休。午前8時半~午後5時(入館は4時半まで)。一般500円、小中学生250円。問い合わせは博物館(0749・22・6100)へ。(筒井次郎)

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