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 東京電力福島第一原発にたまる処理済み汚染水について、政府が海洋への放出を検討していることに関し、資源エネルギー庁が26日、千葉県銚子市で行政や水産関連の事業者団体を対象に意見交換会を開いた。参加者からは放出に理解を示す意見はなく、影響を心配する声が相次いだ。

 意見交換会には市や商工会議所、銚子産水産物の加工・流通に携わる事業者団体の代表らが出席した。

 同庁の担当者が福島の復興の進み具合や原発の廃炉計画を述べ、汚染水に含まれる放射性物質トリチウムの生態への影響は軽微であることなどを説明した。

 質疑に入り、水産加工業でつくる組合の代表者は「この9年半でようやく8~9割の風評被害を払拭(ふっしょく)できた。この努力を無にしてはいけない」と訴え、ホテル・旅館業の団体代表は「銚子は海と魚。海と戯れに来る人たちにも影響が出る」と懸念を示した。

 越川信一市長は「地元の納得と理解、実効性ある風評対策がない限り、放出決定はしないと約束できるか」とただしたが、資源エネルギー庁の担当者は「継続して対策を考えていく」などと述べるにとどめ、明確な回答はなかった。

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 処理済み汚染水の放出で千葉県内の漁業関係者が恐れるのは、風評被害の再燃だ。福島第一原発事故の直後、試験操業で捕った近海のマサバやヤリイカなど5魚種について県が放射性物質の有無を検査。結果はいずれも当時の暫定基準値を下回り、銚子市漁協は「安全宣言」を出した。にもかかわらず、大手スーパーなどの取引見合わせが相次ぎ、魚価は下がり続けた。

 県産海産物の輸出は、近隣では中国・韓国・香港・台湾で再開できていない。

 韓国からは2014年の暮れに調査団が来た。漁協の大塚憲一常務理事は「説明する県の担当者に対する調査団の口調は厳しく、我々もいろいろな資料を提出させられた」と話す。

 台湾からもかつて県知事やメディアの視察があり、マグロを取引する第1市場を坂本雅信組合長が案内した。「彼らは『うまい、うまい』って食べてくれたのに、全然だめだった」

 坂本組合長は「風評は科学ではないんです。捕った魚のモニタリングはずっとしているわけだし。もし汚染水が放出されたら輸出は先延ばしでしょう。国の判断でもし放出するなら、その結果起きたことを国が責任を負うのは当然です」と話した。(高木潔、真田香菜子)

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