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 元プロ監督の「親心」が印象的だった。

 26日にあったプロ野球ドラフト会議で、智弁和歌山からはエースの小林樹斗が広島に、主将で遊撃手の細川凌平が日本ハムにともに4位で指名された。

 最初に記者会見に出たのは152キロ右腕の小林。「素直にうれしいです」。その第一声は小さく、表情は硬い。4巡目まで待っていた時間を問われ、「長かったです」とぽつり。

 隣では、中谷仁監督(41)が微笑を浮かべていた。「小林への期待を」と水を向けられ、少しおどけた感じで語り始めた。「気の利いたコメントもできないし、林先輩の名前も出さない。そこも含めてプロの指導者に鍛えていただければ」。“林先輩”とは、2年前に広島にドラフト3位で入団した林晃汰(19)のこと。

 この「ダメ出し」に報道陣からどっと笑いが起き、会場の雰囲気が温まり始めた。

 小林の緊張もほぐれてきた。直球への自信を問われ、「数字、球速のこだわりをなくして、本当に勝つことに集中したい」と言った。

 ここでも監督は、すかさずフォローした。「投手は勝つためにゼロに抑えるという教育をしたので、かたくなにそれを守っているのだと思います」

 そして、続けた。「本人も球速へのこだわりをもっているので、日本人最速、160キロを超えるような直球を投げられる投手になってほしいです」

拡大する写真・図版記者会見の終盤、笑顔を見せる智弁和歌山の小林(右)と中谷監督

 同校OBでもある中谷監督は1997年秋、捕手としてドラフト1位で阪神から指名された。主力ではなかったが、楽天、巨人を経て15年間プロで生き抜いた。

 その経験を踏まえ、プロでは自分だけの「武器」が必要だと、後輩であり教え子の彼らに改めて示したのだろう。

 続いて行われた細川の会見。監督は、中学時代に細川が三塁打を打った姿を見て、そのベースランニングのスピードが「プロ野球選手並みだった。ひとめぼれした」と、走力を強調した。

拡大する写真・図版プロでの目標を書いた色紙を手に撮影に応じる智弁和歌山の小林(右)と細川

 小林は会見後に明かした。「監督に救ってもらいました。会見中は頭が真っ白。何を言ったか覚えていないです」。ただ、恩師が語ってくれた目指すべき道筋は、きっと役に立つだろう。(小俣勇貴

拡大する写真・図版会見後に3人で写真撮影に応じる智弁和歌山の中谷監督(中央)、細川(左)、小林