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 人口約270人の愛媛県内子町石畳地区は、南予の山間部にある。人口減少が続くこの地域で、若手の栗農家7人が立ち上がり、地元の栗をブランド化する取り組みを進めている。

 10月上旬、山の斜面に栗の木が並ぶ宝泉武徳さん(53)の園地を訪れた。「いがから栗がぽとっと落ちるのが理想」と指さすのが、茶色いいがから顔を出す丸みを帯びた大粒の栗「完熟石畳栗」だ。

 もともと育てていた栗の木に独自の剪定(せんてい)方法を施して、いがに送られる養分を多くして、甘みのある大きな栗を育てた。へたが太いため、いがが枝に残ったまま中の栗の完熟度が高まり、自然に落ちるという。さらに、無農薬で、水に浮かべて沈んだものを選ぶ選果方法を用いるのが特徴だ。

 30年ほど前から、地区では、昔ながらの農村風景を残そうと「村並み」保存の活動が盛んだった。地元の熱意ある人々が、水車の復元やしだれ桜の保護などに取り組んできた。

 一方、中心メンバーのひとりだった宝泉さんは、活動の持続性に不安を抱いていた。住民の生活を支える生業が必要だと感じ、4年前、地元にあった栗産業に新しい方法を取り入れることに。地区内の30ほどの栗農家のうち、若手7人が集まり、県外の栗の研究家から完熟栗の剪定方法を学んだ。これまでの園地や栗の木を使って、完熟栗の栽培が始まった。

 7人のうちのひとり、山田哲也さん(38)は、完熟栗を始めるにあたり、JA職員を辞めて就農。「覚悟を決めた」と振り返る。山田さんの父は、当時水車の復元など村並み保存の活動に力を入れており、山田さんはまちづくりのいわば「2代目」。「父たちにつないでもらったものを生かして、自分たちの子や孫の世代につなげたい」という思いが背中を押した。今では、焼き栗の実演販売などを通して、お客さんからの「おいしかった」という声を聞き、「手応えを感じている」と話す。

 今年は、商品開発や販売に力を入れる。メンバーは、松山市のカフェや洋菓子屋の経営者らと出会い、今夏、商品開発費用を集めるクラウドファンディング(CF)を開始。募集終了時には、1千万円を超える寄付が集まった。返礼品は、今年開発をした栗をつかったジェラートやロールケーキ、パイなど。CFで集めた寄付で、新たな商品開発をすすめていく。

 「課題は、生産量と人手不足」と宝泉さん。樹齢数十年になる栗の木に新しい剪定方法を取り入れたため、木自体の「バランス」がとりづらく、思うように生産量が上げられないという。また、選果には時間と人手がいるため、人手不足が生産量を抑えてしまっている。「栽培方法はまだまだ改善がいるが、引き続き次の構想を考え、栗と言えば石畳というブランドを構成していきたい」と意気込む。(寺田実穂子)

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