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 60~80代の男性ばかりの長野県高山村議会(定数12)に、6人の子を育てる40代女性が加わることになった。過去2回の村議選では、欠員が出るなど議員のなり手不足が深刻化。その危機感から「やってみなければわからない」と挑んだパート従業員の高井央葉(なかば)さん(41)が、27日告示の村議補選で無投票当選を果たした。

 村役場で午前8時半に始まった立候補届け出の受け付けから1時間ほど経って、高井さんが手続きにやってきた。「子どもを保育園に送ってきました」

 1歳から中学2年まで6人の子の母だ。とりわけ政治に関心があるわけではない。豊かな自然を求めて長野市から家族で移住して11年目。村政に大きな不満があるわけでもない。

 ただ、2013年と17年の村議選がいずれも候補者数が定数に1届かず、欠員のままとなったことが気になっていた。「なぜ立候補しないんだろう」「議会って何をやっているの?」。子育て仲間や世代が少し上の女性ら十数人の間でそんな声が自然にわき、昨年ごろから茶飲みの話題になっていた。

 「説明だけでも聞いてみない?」

 同じく子育て中の女性から、今月16日の立候補予定者説明会に誘われ、自分の中で初めて「議員」が現実味を帯びた。就職氷河期とされた時代に大学を卒業した「ロストジェネレーション世代」の高井さん。なんとか職に就けた会社からは「本当は男性が良かったんだけど」と言われた。そんな経験も「現役世代の、暮らしている人の生(なま)の声を政治に届けたい」との思いにつながった。

 「補選次第では定数削減の議論が出てくるかも」(村関係者)との懸念もあったが、ふたを開けてみれば説明会には2人を含め計5人が出席。「村にとって欠員の解消と選挙をすることは必要」と出席したわけを語る70代の元村議や、「女性の村議会積極参画」などと記した公約を携えた70代男性もいた。

 女性の立候補と欠員解消の見通しが立ったことで出席した5人のうち3人は立候補を取りやめたが、少なくない村民が危機感を共有し、村や議会の未来を考えていることに力づけられたという高井さん。無投票での初当選に「仕事や家のことに一生懸命なお母さんたちが、生き生きできる村にしたいなあ」と話す。

 「政治や議会のことがわからないから、(政治参加を)やめようではなく、一度やってみてこそ見えてくる世界があるかもしれない」。生活と政治とをつなぎたいという新人議員の挑戦が始まる。(北沢祐生)