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 群雄割拠の将棋界の頂点にたつ渡辺明名人と、囲碁界のレジェンド、趙治勲名誉名人が11月14日午後、将棋・囲碁の2面対局で激突する。8月下旬、囲碁名人戦第1局の控室で初めて顔を合わせた2人は、ハンディをつけた将棋(4枚落ち)と囲碁(9子)の同時対局を行い、共に下手が勝利した。あれから約2カ月。オンラインイベント「渡辺明vs趙治勲 名人の本懐~番勝負の鬼 勝負と真理を語る」(申し込みサイト=http://t.asahi.com/dj1114別ウインドウで開きます)での再戦が決まった2人は、朝日新聞社の記者を通じて手合いを協議。将棋は2枚落ち、囲碁は6子に決まった。前回に比べて下手にきつい手合いだが、勝機はあるのだろうか?

 10月23日、渡辺名人は自身のブログでイベントを紹介した。再戦に向け、「4枚落ちは上手が相当キツイということは伝えました(笑)」と記した。4枚落ちは、上手が飛車と角、左右の香車2枚の計4枚を落とす手合い。渡辺名人の意向は、朝日新聞将棋担当の村瀬信也記者から囲碁担当の大出公二記者に伝えられた。大出記者が趙名誉名人に打診し、将棋は渡辺名人が飛車と角を落とす2枚落ちに、囲碁は渡辺名人が6子置く手合いに決まった。

 2枚落ちと6子とはどれぐらいのハンディなのか。

 将棋界では、プロに2枚落ちで勝てばアマチュア初段以上の実力があるとされる。4枚落ちに比べて香車が2枚加わり、端の弱点がなくなる分、上手にとってはるかに負けにくくなる手合いだ。囲碁の6子もアマチュア初段以上という。こちらも9子に比べて、アマチュアがプロに勝つハードルは格段に上がる。初段はアマチュアがまず目標とする棋力で、将棋も囲碁もプロの対局を楽しめるようになるレベルといえる。大出記者によると、趙名誉名人は再戦に備え、ネット上の将棋対局サイトで特訓を開始したという。

 8月の対局の模様は、朝日新聞のユーチューブ専門チャンネル「囲碁将棋TV―朝日新聞社―」にアップされている。

趙治勲名誉名人VS渡辺明名人、なんと囲碁と将棋の同時対局!感想戦までノーカット=高津祐典撮影

 渡辺名人が囲碁名人戦第1局の控室を訪れ、棋界の大先輩にあたる趙名誉名人が誘って同時対局が実現した。

 趙名誉名人は加藤一二三・九段に二枚落ちで勝ったことがあるという腕前。渡辺名人は普段はもっぱらネット対局で、人間のプロと打つのは初めてだった。お互いの棋力が手探りということもあり、4枚落ち、9子の手合いに決まった。

 対局前に趙名誉名人は入念な準備をしていた。囲碁名人戦の解説役で現場にいた高尾紳路九段がスマホで4枚落ちの勝ち方を解説するサイトをみつけ、趙名誉名人と共に作戦会議。棒銀戦法で上手陣を破る手順をしっかり確認し、対局に挑んだ。

 話し好きの2人も、対局が始まると真剣な表情で盤上に没頭した。将棋と囲碁の盤を並べて交互に進めていくが、将棋の渡辺名人はもっぱら碁盤をにらみ、囲碁の趙名誉名人は将棋盤に集中していた。プロにとって自身の専門領域は考えなくても自然に指がいいところにいく。「指が覚えている」と表現される、プロのプロたるゆえんだ。ところが、アマチュアとなるとそうはいかない。悩み、呻吟(しんぎん)することになる。囲碁の対局では、ぼやきが有名な趙名誉名人は一言も発しない。対局者が声を上げたのは、将棋の序盤で趙名誉名人に好手があり、渡辺名人が「強い。四枚落ちの手合いじゃないです」と思わず言ったときぐらい。静寂は1時間余り続いた。

 将棋はどんどん差がつまり、最後は下手が詰まさないと危うい、という局面で、趙名誉名人が詰み手順を発見。渡辺名人が「負けました」と投了すると、趙名誉名人は破顔一笑し、差がついていた囲碁の対局では投了。囲碁、将棋とも下手が快勝という結果になった。

 渡辺名人は「見事な指し方でした」と脱帽した。将棋の対局を記録していた記者は趙名誉名人に棋譜を公開していいかどうか尋ねたところ、「そんなのいいに決まってるじゃない。全世界に公開して!」と即答し、控室は爆笑に包まれた。

 11月14日の再戦の手合いは、この時の対局の中身を踏まえ、2人の合意によって決められた。

 イベントはZoomで配信する。ここでは2人の対局を主に紹介したが、「番勝負の鬼 勝負と真理を語る」をテーマにした対談は、囲碁・将棋の世界が好きな人にとっては必聴といえるだろう。合理主義者で戦略家の渡辺名人と、求道者といわれる趙名誉名人の勝負観の違いに迫る。羽生善治、藤井聡太、井山裕太、芝野虎丸といった、将棋と囲碁の「天才論」も交わす。AIがもたらしたものとは何なのかもテーマだ。参加者の質問も2人にぶつける。

 参加費は一般3500円(税別、先着500人)と、プレミアム2万円(同、先着30人)。全員に当日の様子を盛り込んだPDF記念号外をメール送付する。プレミアムは、渡辺名人と趙名誉名人の連名の特別サイン色紙や、Zoom上での両棋士との記念撮影、本などの特典がつく。詳細や申し込みは(http://t.asahi.com/dj1114別ウインドウで開きます)へ。

 8月の将棋の対局の棋譜は以下の通り。通常は上手を後手として表記するが、便宜上、上手を先手にしている。

 ▲上手・渡辺明名人 △下手・趙治勲名誉名人 四枚落ち

 ▲7八金△3四歩▲4八銀△8四歩▲5六歩△8五歩▲5七銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲8八銀△7二銀▲6八玉△9四歩▲3八金△9五歩▲3六歩△8三銀▲4六銀△3二金▲5五歩△4二銀▲6六歩△7四銀▲3七桂△3三銀▲6七玉△4四銀▲5六玉△8五飛▲6七玉△6四歩▲7六歩△6五歩▲7七銀△6六歩▲同銀△9六歩▲同歩△9八歩▲7七桂△8二飛▲7五歩△6三銀▲4八金△9九歩成▲5七金△9八と▲7六玉△9七と▲5六金△9六と▲6四歩△5二銀▲6五桂△8六歩▲同歩△同飛▲6七玉△8九飛成▲6八金△8六と▲4五桂△6二歩▲8二歩△8七竜▲5八玉△7六と▲8一歩成△6六と▲同金△3八銀▲6七金上△8一竜▲3五歩△8八竜▲5七玉△3五銀▲同銀△同歩▲7三桂成△4四歩▲3三歩△同桂▲同桂成△同角▲5六玉△7二歩▲7四成桂△1五角▲6五玉△3七角成▲3四歩△4七馬▲5六桂△4三金▲7六金寄△4八馬▲5七桂△4七銀成▲4四桂△5七成銀▲5二桂成△同金▲6六金寄△4七馬▲5六銀△同成銀▲同金寄△8六竜▲4五銀△4四歩▲6三銀△4五歩▲5二銀成△同玉▲7六金打△8七竜▲7七金引△9六竜▲8六歩△8二桂▲4四歩△5四銀▲同歩△同金▲7六玉△6五銀まで130手で趙治勲名誉名人の勝ち(丸山玄則)