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 子宮が生まれつきなかったり、がんなどで失ったりした女性が出産できるようにする子宮移植を国内で実施するかどうかの議論が大詰めを迎えている。日本医学会の検討委員会が28日開かれ、近く報告書をまとめることになった。子宮移植は妊娠、出産の目的のために健康な第三者から子宮を移植することになるため、倫理面などで課題を指摘する声もある。

 国内では慶応大の木須伊織・特任助教らのグループが子宮移植の計画を立てている。卵子をつくる卵巣はあるが、生まれつき子宮や膣(ちつ)がない「ロキタンスキー症候群」の女性5人に実施し、安全性や有効性を評価する。子宮の提供者は、母親や姉妹を想定。2018年に計画案を日本産科婦人科学会と日本移植学会に提出した後、国内最大の医学組織、日本医学会が引き取って、19年から検討委員会が当事者へのヒアリングなどを重ねてきた。

 ロキタンスキー症候群の女性は、4500人に1人ほどの割合で生まれてくる。将来的には、子宮筋腫やがんで子宮を摘出した人なども対象となる可能性もある。国内で子宮がない女性は20~40代だけで推計で約6万~7万人いる。

 子宮がない女性が自身の卵子で子どもを持ちたいと思った場合、海外では代理出産という方法もある。しかし、国内では日本産科婦人科学会が認めていない。

 国内で子宮移植の実施例はないが、海外では2000年以降、母親や姉妹、亡くなった人から提供された子宮の移植が試みられ、スウェーデンのグループが14年に初めて出産に成功。米国やチェコ、中国など10カ国以上で40人近い赤ちゃんの出生が報告されている。移植を受けた人のほとんどはロキタンスキー症候群だが、子宮がんなどの人もいる。

 子宮移植では、移植後1年ほど様子をみて、子宮に受精卵を入れる。受精卵は事前に採った卵子を体外受精させ、出産は帝王切開になる。移植した子宮への拒絶反応を抑える免疫抑制剤が必要になるが、長期間使うとがんなどのリスクがあり、出産が終われば子宮を摘出する。出産までに約2千万円かかるとの試算もある。

 親族などの健康な人から子宮を摘出するには高度な技術が求められる。手術は10時間を超えることもあり、命を失うリスクも伴う。海外では亡くなった人の子宮を用いた例もあるが、国内では臓器移植法で認められていない。移植を受ける人も手術のリスクがあり、妊娠、出産できる保証はない。また、免疫抑制剤の胎児への影響など、安全面でも不明な点はまだ多い。(市野塊、後藤一也)