拡大する写真・図版宇宙に飛び立つことが決まった「スペースまるとっとアジ」=2020年10月28日午後2時15分、松山市、足立菜摘撮影

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 愛媛県東温市の干物メーカーが開発し、宇宙食に認められたアジの干物が、野口聡一飛行士とともに国際宇宙ステーション(ISS)へ飛び立つことになった。開発に約5年。従業員約40人の小さな企業の夢が、ついに実現する。

 宇宙へ旅立つのは、キシモトの「スペースまるとっとアジ」。2011年に商品化した干物「まるとっと」の改良品だ。「まるとっと」はアジやタイを高温・高圧で処理し、小骨が軟らかく丸ごと食べられるのが特徴で、年間5千万~1億円を売り上げる。

 この干物が宇宙食になったのは、一人の男子高校生との出会いがきっかけ。14年、松山工業高校の男子生徒が「まるとっと」の開発について取材しようと、キシモトの岸本賢治専務(80)を訪ねてきた。15歳の高校生に「将来の夢は?」と聞かれた岸本さんは、自分が15歳のころ、日本で戦後初めてロケットが飛んだことを思い出した。「もし宇宙人がいるなら、まるとっとを食べてほしい」

拡大する写真・図版田中英樹副知事(右から2人目)に報告するキシモトの岸本賢治専務(右端)、岸本善光社長(中央)ら=2020年10月28日午後1時31分、松山市の愛媛県庁、足立菜摘撮影

 男子生徒は後日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に電話。「まるとっと」のことを伝えると、JAXAの担当者がキシモトにやって来て「宇宙食として研究してみないか」と提案したという。そこから開発が始まった。

 「まるとっと」が宇宙食の規格をクリアするためには、水分量を減らすことが大きな課題。ISSで水分が飛び散れば、機器の故障につながりかねない。開発のための設備投資に数億円を費やした。水分を1%減らすのに数時間の加工が必要で、生産コストもかかった。実験で使ったアジを、岸本さんは年間1万匹も食べてきたという。

 そうした努力が実を結び、基準をクリア。今年、JAXAから「宇宙日本食」に認められた。

 「スペースまるとっと」は一口サイズに切り分けられ、塩分や匂いは控えめ。「カルシウム豊富で、食べた後のごみがほとんど出ない」。野口さんが乗り込む宇宙船に積み込まれることが決まり、早ければ11月上旬にも打ち上げられる。

 28日、県庁を訪問し、田中英樹副知事に報告した岸本さんは「たとえようがない」と喜びを語った。

 今後、県内のスーパーなどでも数量限定で販売する。1袋50グラム900円(税抜き)。(足立菜摘)