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 福井県坂井市の東尋坊で自殺防止活動に取り組むNPO法人「心に響く文集・編集局」がこのほど、700人目の自殺企図者を保護した。2004年4月の発足以来、岩場でうなだれる人に声をかけ続けて16年半。メンバーらは「これからも人命救助活動を続けていきたい」と思いを新たにしている。

 700人目は北陸地方に住む女性(51)だった。9月末の午後5時半ごろ、元警察官でNPO法人理事長の茂幸雄さん(76)が、東尋坊タワーの駐車場から、ふらつきながら岩場に向かおうとする女性を見つけた。

 事務所がある茶屋「心に響く おろしもち」に誘導し、話を聞いたところ「2年前からうつ病を患い、入退院を繰り返している」「母親の年金で、2人目の夫(既に離婚)との間にできた6歳の娘と3人で暮らしているが、うつ病や新型コロナウイルスの影響で働く場所もないため、自殺をしに来た」などと泣きながら語った。今年はコロナ禍を背景に自殺企図者が増えており、その一人だった。

 女性は睡眠薬を飲んでいたため、救急車で福井市内の病院に搬送された。メンバーらは「子どものためにも何とか立ち直ってほしい」と願う。

 NPOが過去5年間に保護した人は、15年が38人、16年が34人、17年が39人、18年が28人、19年が32人。坂井西署の調べでは、東尋坊で見つかった変死者の数は15年が12人、16年が14人、17年と18年が10人、19年が13人だった。

 NPOは今年、9月末現在で昨年同期より3人多い28人を保護した。同署によると、見つかった変死者は既に10人を数えるという。

 厚生労働省の助成を受けてNPOは7月、コロナ禍による自殺防止のための「悩み事相談所」(0776・81・7835)を茶屋に設けた。面談や電話、メールで受け付けている。パトロールにも変わらず力を入れ、40~70代の12人が水曜を除く週6日、朝から日没まで、交代で岩場や遊歩道の監視を続けている。

 茂さんは「行政が実施する専門家による相談業務は事前予約や時間制限、土日の休日などが設けられているが、そうした制約をとりやめ、本人や家族の目線に合わせた態勢を整えるべきだ」と訴えている。(堀川敬部)