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 目標そのものが間違いだったのか、方法が誤っていたのか、あるいはその両方か――。

 安倍晋三前首相の意を受け、日本銀行が黒田東彦総裁のもとで2年で達成すると宣言していた「2%インフレ目標」は、ついに第2次安倍政権の7年8カ月の間、1度も実現することはできなかった。

 さらに日銀は29日、今後2年内にも実現できそうもないという予測結果を発表した。結局、アベノミクスや異次元緩和の理論的支柱だったリフレ政策は、10年かけても実現できない欠陥政策であることが判明したようだ。

 2%目標は「金融緩和によって物価を上げれば景気が良くなり成長率も高まる」というリフレ論にもとづいて掲げられたものだ。政府・日銀が共同声明で約束した公式目標でもある。

 だが当時から日銀も、多くの経済専門家も、人口減少と超高齢化が進む成熟社会、低成長経済となった日本でこの目標は過大目標であり、無理やり実現させようとするとむしろ弊害が大きい、と指摘していた。

 それを押して、しかも「2年」という期限まで示して黒田総裁らが「やってみせる」と踏み切った目標である。

 しかし、日銀が29日発表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)には、当初の威勢の良さはみじんも見えない。黒田総裁と副総裁2人を含む政策委員9人の当面の経済見通しによると、消費者物価指数(生鮮品を除く)の見通しは今年度がマイナス0・7~マイナス0・5であり、2022年度でも0・4~0・7%上昇にとどまるという。

 つまり黒田総裁自身が「10年かけても目標達成は無理」と白旗を掲げてしまっているのだ。

拡大する写真・図版記者会見する日本銀行の黒田東彦総裁=29日午後4時17分、東京都中央区、代表撮影

 日銀がこの目標に拘泥し続けてきたために、安倍政権の期間の大半が景気拡大期であったにもかかわらず、日銀は1回も金融引き締めができなかった。

 それどころかゼロ金利、マイナス金利、量的緩和、長期金利コントロールなどの異次元緩和メニューをフル稼働させ続け、日本経済を金融緩和の麻薬づけにしてしまったのだ。

 政府の財政赤字も拡大の一途をたどっている。にもかかわらず日銀の国債買い支えに甘え、政権からも与野党からも財政健全化を進めよという声はいっこうにあがらない。株式市場や不動産市場は実力以上の高値相場が続き、いわば金融緩和頼みのバブルになっている。

 一方、副作用も深刻だ。ゼロ金利、マイナス金利の長期化によってローンビジネスが成り立ちにくくなっている。銀行経営への影響が懸念され、とりわけ地方銀行で次第に窮地に陥るところが出てきかねない。

 もちろんコロナ危機下に金融を引き締めるわけにはいかない。ただ、2%目標の位置づけが絶対目標であり続けるかぎり、コロナ危機が収束したとしても日銀は「永久緩和」のわなから抜け出せないだろう。

     ◇

 29日の日銀記者会見で、黒田総裁にこの問題を尋ねた。日銀にとって2%目標は今もあらゆる手を使って早期達成すべきものか、それとも中長期の緩やかな目標に変質したのか、と。黒田総裁の答えはいつも通り想定問答に沿ったものだった。

日銀の金融政策決定会合に関する原真人・編集委員の論考は、記事の前半で黒田日銀が掲げる目標とその現在地について整理しました。後半は内外の専門家の見方やその影響について考えていきます。

 「いろんな事情から……原油価格の動きとかそういうことだが、2年ていどで実現することは難しくなったことは認めている。その後もできるだけ早期に実現するという目標は依然として維持しており、それ自体は適切なものだ。先進国の中央銀行もほとんどが2%目標を掲げている」

 おなじみの総裁のこの答弁も、…

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