写真・図版

  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
[PR]

 岩手県滝沢市の盛岡農業高校で9月、ハンマー投げの練習中に投げたハンマーがあたって生徒2人が負傷した事故について、佐藤博・県教育長は29日、県内の高校の練習場を点検した結果、ただちに使用を中止する必要があるような不備は認められなかったと明らかにした。事故が起きた状況については、専門家の意見を聞きながら調査を進めているという。

     ◇

 事故は9月16日夕に発生した。陸上部員が練習中に投げたハンマーが、想定していたエリアから左にそれ、約30メートル離れたテニスコートにいたソフトテニス部員2人にあたった。

 県教委によると、ハンマーの鉄球部分が頭部にあたった生徒は現在リハビリ中で、快方に向かっているという。ワイヤや持ち手があたった別の生徒も軽傷を負った。佐藤教育長は会見で、「二度とこのような事故が起きないよう、改めて各学校に事故防止の徹底を要請した」と話した。

 岩手陸上競技協会理事で、約40年にわたり県内の高校でハンマー投げの指導にあたってきた高橋正美さん(73)は、防護ネット整備の難しさを指摘する。

 盛岡農では投てき場所に高さ5、6メートルの防護ネットが設置されており、ハンマーは正規の飛び出し口を通って大きく左方向にそれて飛んでいったとみられる。高橋さんは「本来はハンマーが飛び出す箇所に、さらにネットを2枚置いて、今回のような事故を防ぐのが望ましい。ただし、防護ネットは全体で数百万円もするので県立高が手軽に買い替えできるものではない」と話す。

 また事故当時、陸上部の顧問は職員会議のため不在だった。高橋さんは現在も外部コーチとして黒沢尻工業高校で指導にあたっているが、必ず指導者がいるときに投てきをするよう徹底しているという。ただ、「具体的な指導マニュアルが共有されているわけではない。定期的に講習会などを開く必要があるのではないか」と指摘する。

     ◇

 日本スポーツ振興センターによると、重大な被害があったとして災害共済給付をした事例の中で、ハンマー投げなどの投てき種目での事故は2005~18年度の14年間で16件あった。

 これとは別に群馬県の県立高校では17年、陸上部員が投げたハンマーが頭にあたったサッカー部員が死亡する事故が起きた。このとき同県教委が設置した第三者検証委で委員長を務めた、東京学芸大の渡辺正樹教授(安全教育学)によると、他部の生徒が被害にあった点、指導者が不在だった点などで盛岡農の事故と共通するという。

 渡辺教授は「何度も大きな事故が起き、そのたびに対策を取ろうとしているが行き届いていない」と指摘する。部活動では他部とグラウンドを共用せざるを得ない場合が多いことから、時間をずらして利用するなどの工夫が必要としている。また、同じ競技の生徒たちが近隣の高校に集まって合同練習する取り組みも進められているという。

 日本陸上競技連盟は「陸上競技安全ガイド」と題する動画をネット上で公開している。投てき種目については、練習場所の範囲を示すためにコーンを立てて境界線を示す▽投てき時に声で合図する▽回転しながら投げるため思わぬ方向に飛ぶと想定する▽防護ネットが正しく設置されているか確認する▽用具が滑りやすい状態ではないかチェックする、といった注意点を分かりやすく解説している。(中山直樹、大西英正)

関連ニュース