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 大阪市をなくして四つの特別区に分割する大阪都構想の住民投票が11月1日に行われる。賛成が上回れば、全国で初めて政令指定市が廃止されることになる。賛成派と反対派を代表する2人に、焦点となっている大阪府と市の二重行政や住民サービスについて聞いた。

二重行政を解消 経済成長につなぐ 大阪維新の会代表代行・吉村洋文氏

 ――都構想で何を目指しますか。

 「都構想の大きな目的は二つ。一つは二重行政を解消することで大阪の成長を目指す。もう一つは住民サービスの拡充を目指す」

 「二重行政については、大阪市と大阪府がそれぞれ同じ権限を持って狭い大阪というエリアの中で、同じような仕事を二重にやって、大阪の方向性を決めることができていなかった。大阪市と府を合わせて、府市合わせ(不幸せ)と揶揄(やゆ)される状況がずっと続いてきた。大阪の成長を阻害する積年の課題だ。根本的に解決し、成長する大阪を実現させていく」

拡大する写真・図版大阪都構想について語る吉村洋文知事=2020年10月6日午前10時52分、大阪府庁、増田勇介撮影

 ――自治体の形を変えることが経済成長につながりますか。

 「自治体の形だけで成長するわけでは当然ない。でも、自治体がどう牽引(けんいん)するかが都市の成長に大きく寄与する。世界の諸都市もそこに非常に力を入れている。東京もそう。環状線がどんどん広がり、地下鉄も戦略的な絵を描いている」

 「大阪市と大阪府はばらばらにやってきたから、乗客が少ない(地下鉄の)今里筋線を作り、都市戦略として(大阪市の)中央を走るなにわ筋線がなかなかできない。大阪市の中だけの目線しかないから、うまく都市戦略を描けない。都市の成長には、行政が果たすべき役割も非常に大きい。変えればバラ色というわけではないが、変えることによってより効率的で戦略的な都市経営ができるようになるし、経済活動も活発化すると思う」

 ――住民サービスは維持できるのですか。

 「都構想の目的の一つは、住民サービスを充実させること。今は270万人の市民を1人の市長が見ている状況だが、基礎自治の業務は身近なところで決定できる人を選んでいくのが非常に重要だ」

 「例えば、小中学校も(現状の約)420校に一つの教育委員会、1人の市長ではなく、100校ずつにすれば、それぞれの区長と教育委員会が地域にあった特色のある学校支援もできるんじゃないか。四つできる児童相談所もそう。児童虐待対応の充実を図ることができる。保健所も今は一つだが四つになる」

 「反対派は『指定市のままだからこそ、高い住民サービスが維持できる』と言うが、指定市だからできるわけじゃない。財源を生み出す成長の根幹が必要で、大阪の成長というところにつながってくる」

 ――府と市の連携は大阪維新の会という政党を媒介にして連携している側面もある。維新が多数派なら都構想がなくても連携がずっと続きませんか?

 「維新という政党もいつまで続くかわからない。同じ共通の政策、公約を掲げているから何とか成り立っているが、政党も結局は人の集団。人の関係や政党の関係がずれた時には必ず二重行政になると思う。維新がいつまでもあるという前提でやるのは将来に対して無責任だ」

 「制度的に欠陥があるんだから、制度的に解決しましょうということ。維新が生まれる前の二重行政も政治家の資質の問題というよりは、二重行政になりやすい制度だった。制度的な欠陥だと思う」

 ――デメリットに関する説明が少ない。

 「新しい都構想のメリットとデメリットを比較するよりは、かつての大阪府・市の二重行政に戻るのか、あるいは成長戦略を一元化する都構想にするのかの比較が大切だ。メリット、デメリットはこれまでもずっと議論してきた。デメリットを修正するために、前回と違う内容になっているので、それを説明している」

     ◇

 よしむら・ひろふみ 1975年生まれ。大阪府河内長野市出身。大阪市議、衆院議員を経験後、2015年大阪市長に。19年から大阪府知事を務める。

自治体の形より 政策の実現に意義 自民党大阪市議団幹事長・北野妙子氏

 ――松井一郎・大阪市長(大阪維新の会代表)に市議会で、「大阪市を廃止しないと解消できない二重行政は何か」と質問していました。

 「松井市長は『(今は)ない』と言った。私たちもないと思う。二重行政の解消につながるから住民投票に賛成という方が非常に多いと聞いている。大阪府と大阪市という同じ名前の自治体が二つあることが二重行政だと勘違いしている方もけっこういると思う」

 ――維新の知事と市長の連携によって二重行政が解消されたといえませんか。

 「大学や研究所、信用保証協会の統合は進んだが、体育館や図書館は府立と市立がそれぞれ残っている。二重行政の解消を言いながら、残すものもあるのはご都合主義だと思う。役割分担が明確になっているものは二重行政ではなくて、豊かさの象徴だ」

拡大する写真・図版自民党大阪市議団の北野妙子幹事長=2020年10月8日午後、大阪市北区、金居達朗撮影

 ――都構想を実現させなくても、大阪は成長できますか。

 「維新の皆さんは大阪を成長させると言うが、自治体の形を変えたら大阪が成長するものではない。政策の実現が成長につながる」

 「政令指定市と都道府県の間には(地方自治法で定められた)調整会議があり、連携できる。話し合いで決まらないから大阪市をなくしてしまえというなら、大阪府と四つの特別区がお金や権限について話し合いで決めることはできない」

 「府と特別区で二重行政が繰り返されるかもしれない。完全になくすには、指定市が府県から独立する『特別自治市』のような方法を選ばない限り無理だと思う」

 ――自民党は府議の一部が賛成し、府連の反対方針がなかなか決まらなかった。

 「府連で機関決定したから一枚岩であることは間違いない。賛成している大阪市外の府議の方々が、(都構想が実現することによって)大阪市の成長の果実が地元に来るという思いがあることは理解できる。でも、大阪市民が損をするということは、府連内で共通している」

 ――損をするとは?

 「特別区の設置や運営にはお金がかかるが財源は措置されていない。その分、住民サービスを削らざるを得ないという結論になる」

 ――市がつくった特別区の財政シミュレーションにも批判的です。

 「理由は三つある。一つ目は新型コロナウイルスの影響で、市の税収が500億円くらい減収になると聞いているが、全く織り込まれていない。二つ目は収入が落ち込む大阪メトロからの配当と税収に頼りすぎている。三つ目は市民プールやスポーツセンターといった市民が日常的に使う施設の削減効果を上乗せしている。特別区が運営できる唯一の根拠なのに、あまりにも甘い試算だ」

 ――新型コロナウイルスの影響で、市が主催する説明会も減り、政党の活動も制限されている。

 「市が作成した都構想の説明パンフレットはメリットだけ。市民もバラ色の将来だけを示したものに、うさん臭さを肌で感じたのではないでしょうか。前回の住民投票では、私たちの疑義をちゃんと説明パンフレットに差し込んでくれた。今回それがなかったのは残念でならない」

 「コロナの影響は色濃く市民生活に残っている。人を選ぶ選挙なら選び直せばいいが、大阪市に戻す法律はない。急いで住民投票をすべきではなかった」

――市が行った有識者との意見交換会を自民市議団は欠席した。なぜですか。

 「私たちは(制度案を決める)法定協議会でしっかりと議論してきた。推進派の方が進行役だったのはフェアなのかどうか。1週間前に開催を知らされたのは、失礼なやり方だったと思う」

     ◇

 きたの・たえこ 1959年生まれ。大阪市淀川区選出。2005年の市議補選で初当選し5期目。都構想案を議論した法定協議会の委員も務めた。

記事後半では、住所表記や税金などの身近なサービスがどうなるかを解説します。

拡大する写真・図版特別区の区割り

■都構想でどうなる? 身近なサ…

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