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 奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)で、決められた場所であれば借りた車をどこでも返却できる、「乗り捨て可能カーシェアリング」の実証実験が本格化している。車の利用データなどをネット上のシステムで管理する一方、利用者は申し込みや返却、車の解錠・施錠などがすべてスマートフォンでできるのが特徴だ。

 同大情報科学領域ソフトウェア工学研究室の畑秀明助教(36)を中心とした研究グループが、2016年に始めたプロジェクト。管理システムなどの技術面で「ジゴワッツ」「a42」の2社(ともに東京都中央区)が協力している。

 実証実験では学生や教職員約50人が利用者登録し、実験用の電気自動車3台をシェア。利用者たちには、車の使用料として支払うため一定額の仮想通貨「トークン」が配布されている。

 駐車できるのは、学内3カ所、近鉄学研奈良登美ケ丘駅前に1カ所。近く、京都府精華町の「けいはんなプラザ」にも駐車場を設ける予定だ。それぞれに充電設備があり、3台はこのいずれかに駐車されている。

 同じ時間帯に利用希望者が集中した場合に備えて、利用申し込みは「入札」で行う。例えば、Aさんは「2トークン」、Bさんは「1トークン」、Cさんは「0・5トークン」をそれぞれ支払う意思をスマホで入力。開札の結果、入札額が最も高いAさんが利用権を獲得する仕組みだ。

 利用権を獲得すれば、スマホのアプリ「バーチャルキー」が自動的に使えるようになる。このため、車のキーを受け渡しする必要がない。返却手続きもスマホで行うので、乗り捨てが可能になる。

 車を利用中に、次の利用希望者が待っていることが通知される。その希望時間に合わせて指定の駐車場に戻れば、次の利用者が支払うトークンの半分がもらえる。乗りたい場所に車がない場合も、呼びかけに応じた人が回送してくれたら、トークンが与えられる。

 畑さんは、「需要に応じて利用者が車を返却すれば報酬が受け取れるということがインセンティブ(動機付け)となり、利用者間で車を効率的に回すことが可能になる」という。

 実験段階で、目立ったトラブルや事故がなかったため、今年6月からテスト運用をスタート。今後、学内で利用者登録を増やしながら、利用時の入札額、乗車・降車場所、利用時間帯、移動距離、移動範囲などのデータを集積して、より使いやすいルールやシステムに改善していく予定だ。

 畑さんは「とくに交通が不便な地域で、『ちょっと離れた場所へ出かけて買い物や食事をしたい』という時に便利。好きな時に車が使えれば、暮らしも変わる」と話す。

 研究グループは、乗り捨てができる範囲の拡大を計画しているほか、地方大学に同じシステムを導入してもらって、互いの仮想通貨が使えるようにすることなども視野に入れている。(伊藤誠)

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