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 11月の歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」で17年ぶりに「義経千本桜」の狐忠信を演じる中村獅童。相次ぐ映画出演やボーカロイドを駆使した「超歌舞伎」など多彩な活躍を見せる役者は、若手の登用や恩ある先輩の思い出など、10月の取材会で大いに語った。

拡大する写真・図版中村獅童さん

 ――今夏は超歌舞伎を配信しました。

 生の演劇が難しくなっていく中で、配信にかけては歌舞伎では我々が元祖ですから、超歌舞伎は。今やらないでどうすんだって。何かできることを、とドワンゴさんにも相談いたしまして、無観客で配信という形を一日でもとれた。お客様と一体になってロックのコンサートのように盛り上がるのが醍醐味。ユーザーのメッセージがよく見えるところにモニターを置いて下さいってリクエスト出してたんで、「お帰り」とか、胸がいっぱいでした。無観客とはいえ、いつもと同じように、皆さんに泣かされちゃったかな。

 ――1月以来の歌舞伎で「義経千本桜」です。

 やっぱり一番思い出深い(演目)ですよね。平成中村座の浅草での通しを1カ月、哲明兄さん(勘三郎)がお勤めになって、試演会を一日だけやらせていただいて。怒られて怒られて。全然覚えられないし、極度に緊張。「やってご覧」って急に言うんですよ。千本桜は5役全て初役だったんですよ、義経とか。そういうの関係なくて、「何だお前、覚えてないのか君は!」。もう楽屋行く度に怒られちゃって、紀明兄さん嫌いになりそうになるぐらい。落ち込む以外ないわけ。

 今でも覚えているけど、当日震えちゃって家で、行くのが怖くて、始まる1時間ぐらい前ギリギリ。「あいつ来ない来ない、大丈夫か」って心配したらしいんですけど。中村座の皆さんの応援に助けられた。ワーッて拍手がきて、そこから緊張が吹っ飛んで、そっから先は無我夢中で覚えてないんだけど、最後はカーテンコールまでやっていただいて、諸先輩涙涙で。昔のB級映画「がんばれ!ベアーズ」で最後だからって代打ですごい下手なデブ少年がホームラン打っちゃう、そんな状況だよって言われました。わかります?

 破れかぶれっていうか、「母を思う慕う気持ちっていうのだけでやりなさい」っていうのが当時の教えでしたね。(勘三郎は)終わった後、「今日のはもう俺は負けた。あんな風に出来ないよ、悔しいけど。ただ、この気持ちで25日間出来て初めてプロなんだよ」ってことをおっしゃいましたよね。

 その翌々年(2003年)だったかな、新春浅草歌舞伎で、ついに1カ月やらせていただくことになったわけですよね。そうするとね、試演会の当日は無茶苦茶褒めてくだすったんだけど、舞台稽古でまた「ダメだね。なんでダメだか分かる? うまくやろうとか型をどうしようとかしてるでしょ。君の一番いいところはハートが出せるとこ。型とか考えてハートが出せなかったら、いいとこ一つもないよ」って言われて。少しでも上手に、って気持ちを見破られちゃったんでしょう。そうじゃない、「もっと体当たりで、命がけでやってちょうだい」っていうのが兄さんの口癖でしたから。当時の台本、久しぶりに開いたら、言われたこととかが忘れないよう全部そこに書いてあるんですね。今回はその台本を元にまた勉強し直しているわけですけど。

 パッションとハートだけなんですよね。兄さんは教えながら涙流すような方だったから。いまだに勘三郎兄さんが夢に出てきて「何やってんだよ」ってすごく怒られるもん。48歳にもなって。僕の中では(坂東)三津五郎兄さんも勘三郎兄さんも、生き続けてるというか、いまだに声が聞こえてくるんですね。

 ――このタイミングで、狐忠信…

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