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 菅政権が掲げる地方自治体の業務システムの統一について、総務省が2日、検討会を立ち上げて議論を始めた。年内に報告をまとめて統一を義務化する新法の法案を次期通常国会に出す方針だ。2025年度までの移行、統一をめざすが課題も多い。

 検討会は学者や自治体関係者らでつくる。武田良太総務相は同日の検討会で「住民に身近な行政サービスを担う地方公共団体のデジタル化は何よりも重要だ」と述べた。システムの統一により、自治体職員の事務負担が減り、窓口での住民の待ち時間短縮にもつながるとみる。自治体間や政府と地方との間でのデータのやりとりが簡単になれば、オンライン手続きを増やせるとの期待もある。

 住民記録や年金、地方税などで使われるシステムは現在、自治体ごとに異なる。住民票や転出証明書を例にみても、縦横の向きや氏名住所の記載順、旧姓欄の有無など様式はさまざまだ。引っ越しなど自治体をまたぐ転入・転出の時の手続きでも、機械で記載内容を自動で読み取ることが難しく、自治体職員が手入力し、確認する必要がある。

 さまざまなシステムの混在は、自治体同士だけでなく、政府とのデータ連係でも課題となっている。新型コロナウイルス対応で政府が決めた1人一律10万円の「特別定額給付金」の手続きは、申請データと住基データを照合する時に混乱が生じた。

 ただ、統一への課題は少なくない。変更に必要な費用は懸念材料の一つで、全国知事会は10月23日、平井卓也デジタル改革相に財政支援などを求める提言を出した。同会のデジタル社会推進本部長を務める村岡嗣政・山口県知事は「独自で改修を繰り返してきたシステムを変えるのは、予算的にも作業的にも大きな課題だ」と話す。

 全国町村会も今年4月、地方制度調査会での議論で「都市部の団体と同じ仕様のシステムを力関係で強いられることになれば、小規模町村には不要な項目や必ずしも必要ない項目が盛り込まれることも想定され、コストが高くなる恐れがある」と指摘していた。

 そもそも、自治体にはシステムの変更に必要な専門人材が不足している。自治体間の広域連携で共有する、民間人材を活用するなどのアイデアはあるが具体策の検討はこれからだ。

 システムの統一は一方で、政府の要請で運用の変更や費用負担を強いられることも意味する。政府内には、憲法が定める地方自治の原則とどう法的に整理するのかとの指摘もある。

 総務省は、「全国的な視点に立って行わなければならない施策を担う」と地方自治法が政府の役割を定めていることを挙げ、統一義務化の根拠になるとの立場だ。ただ、複数の政府幹部からは「移行しない、できない自治体が出た時に強制できるのか。義務化は難しいのではないか」と懐疑的な声も上がる。(西村圭史、河合達郎)