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 ほとんどの行政手続きからハンコが消える。認め印によるものは全廃し、住民票の写しの請求や転入・転出届、婚姻届などから押印がなくなる方向だ。残るのは登録した実印によるごく一部の手続きとなる。「脱ハンコ」が達成できても、本来の目標である手続きの簡素化やデジタル化は難しい。

 河野太郎行政改革相が各省庁に報告を求めたところ、ハンコがいる行政手続き約1万4700の99%について「廃止する」と回答があった。認め印でもできる約1万2400については、すべてなくす。

 年内にも政省令を改正し、法改正が必要なものは来年の通常国会での成立をめざす。

 年1千万件を超えるような身近な手続きでハンコがいらなくなる。例えば市区町村への住民票の写しの請求は、年約6500万件に上る。いまは押印または署名を求めているが、総務省はどちらも廃止する。運転免許証やマイナンバーカードなどで申請者の本人確認をしている。

 戸籍謄抄本を請求する際のハンコもなくなる見通し。法令上の根拠はないが慣例として押印を求める自治体もあるとみられ、法務省は必要なら通達などで廃止を徹底させる。

 自動車の車検は国土交通省の省令により申請書に車の使用者の押印欄があるが、見直すという。

 内閣府は児童手当の受給資格を確認する手続きからなくす。厚生労働省も雇い主が従業員にボーナスを払ったときに届け出る書類の押印をやめる。

 河野行政改革相は「三文判を押す行為は個人の認証にはならない」とし、認め印は本人確認の手段としては不十分だとしている。

 印鑑証明の制度は維持される。土地の所有権を移転する際の不動産登記や、会社をつくるといった商業・法人登記の申請では、実印がいままで通りいる。法務省は「財産価値の高い不動産や企業の信用にかかわる手続きでは、厳格な本人確認が必要だ」という。

 ほかにも相続税申告における遺産分割協議書など、いまは数千ある実印や印鑑証明が必要な手続きは80ほどに絞り込む。

 また、法務省は婚姻・離婚届については、署名は残す。同省の担当者は「他人による『なりすまし』などがあった場合、婚姻取り消しを求める裁判の証拠となる署名は残しておく必要がある」と説明する。

 全国の自治体でも見直しが相次ぎ脱ハンコの流れは強まるが、マイナンバーカードは普及しておらず、窓口に行かなければならない手続きは多い。書類の様式や記入法なども役所や自治体ごとにバラバラで、統一のめどは立っていない。(編集委員・堀篭俊材、細見るい、内藤尚志)