継承の酒蔵で初しぼり 長州酒造杜氏「これがスタート」

伊藤宏樹
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 150年近い歴史がある酒蔵を昨春引き継いで発足した長州酒造(山口県下関市菊川町)で2日、発酵が進んだもろみを初めて酒にする「初しぼり」が行われた。杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)たちは、ちょこを手に、圧搾機から少しずつ出るしぼりたての酒の風味や香りを確かめた。

 初しぼりをしたのは、山口市徳地で今年収穫され、60%に磨いた酒米「山田錦」800キロを仕込んだもろみ。蔵の建物は昨年末に完成したが、醸造設備の調整や試運転に時間がかかり、初めての仕込みは10月上旬にずれ込んでいた。

 杜氏の藤岡美樹さん(45)は、新しい圧搾機特有の化学臭で酒の香りが飛ばないよう、水やぬるま湯で洗浄を繰り返してきた。5年ほど前、勤めていた香川県の蔵でもろみをこす布を取りかえた最初のしぼりで風味が消えてしまった苦い経験があり、特に時間をかけて準備をした。

 藤岡さんは2日、機械の設置に携わった人たちも見守る中、蔵人たちとしぼりたての酒を何度も口に含んだ。刻々と変わる風味を「青りんご」「はちみつ」などと表現し、味や香りを確かめていた。「『微差は大差』と言い聞かせてきたが、味わいが損なわれておらず安心した。これがスタート。より精度を上げた造りをしていきたい」と笑顔を見せた。

 銘柄は「酒は天の美禄(びろく)」という酒の異名にちなんで「天美(てんび)」と名付けた。初しぼりの酒は4日に生のまま瓶に詰め、10日に「天美 the(ザ) first(ファースト)」(720ミリリットル、税別1600円)として発売する。予定の2千本は予約で埋まったという。(伊藤宏樹)

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