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 かむほどに味わい深く、そしてお高い――。そんな高級食材を使った学校給食が、京都府内の小中学校などで提供されている。新型コロナウイルスの影響を受けている生産者を応援しつつ、子どものころから地元の自慢の味に親しんでもらい、ファンを増やす狙いだ。

 舞鶴湾を望む舞鶴市立吉原小学校の児童約40人は、10月27日、普段だったら給食にはご縁のない食材を楽しんだ。丹後とり貝だ。

 肉厚な身と独特の甘みが特徴で、1個1千円は下らない。舞鶴湾(舞鶴市)と栗田(くんだ)湾(宮津市)、宮津湾(同)、久美浜湾(京丹後市)など、プランクトンなどに恵まれた内湾で育ち、府がブランド化した高級品として知られる。首都圏や京阪神の料亭で食通たちをうならせる食材だ。

 この日の献立は「とり貝ごはん」。1年生の泉流衣(るい)さん(7)は「甘くておいしい。また食べたい」。子どもたちは食べるだけでなく、地元漁師を招いた学習会でブランド化までの苦労などを学んだという。平進校長は「味わって、名産になっていることを誇りに思ってほしい」と話した。

 城陽市立寺田南小学校では同22日、特別なハッシュドビーフを給食で食べた。

 「京都府産の和牛が使われています」。2年生のクラスで担任の先生がそう言うと、子どもたちはポカンとした表情。それでも、一口食べるとおいしさは伝わったようで、あっという間に平らげた。高田ひなた君(8)は「いつもの給食のお肉よりも、柔らかくておいしい」と喜んだ。

 京都牛は京都府産の和牛の総称だ。市教委によると、市が小中学校で提供している給食の予算は1人あたり1食250円ほど。一方で、この日使われたのは、100グラムあたり1千円前後することもある高価な肉だ。給食ではあり得ない豪華な一皿となった。

ブランド牛への打撃は「口蹄疫以上」

 こうした食材の提供を可能にしているのは府だ。8月から来年3月までの期間限定で、小中学校と特別支援学校を対象に支援を始めた。提供される総量は、たとえば京都牛は1食あたり100グラムなどと限りがあるが、購入費の大部分が府によって賄われる。国の事業を活用している。

 畜産課の八谷純一主幹は「子どもたちが家庭で『おいしかった』と言ってくれれば消費も広がる。京都の食材の魅力を発信したい」と意気込む。

 「おいしい話」の背景にあるのは、コロナ禍による生産者の苦境だ。

 たとえば丹後とり貝。府水産課によると、毎年4~7月に出荷時期を迎えるが、今年は需要が激減した。京都牛も同様だ。府農林水産部や京都食肉市場によると、1頭あたりの価格は、最も下落した今年5月は例年に比べて約3割減に。10月末時点でも、例年を約5%下回っている。

 南丹市で独自ブランドの「平井牛」約2千頭を飼う京都丹波牧場。経営者の平井和恵さん(36)は「口蹄疫(こうていえき)や狂牛病の時も価格は下がったが、今回はそれ以上ではないか」と話す。

 牛肉価格は例年、年末年始や、夏休みシーズンなどに上がる傾向がある。だが今年は3月ごろから値段が下がり、夏も上がらなかった。10月末には例年の水準近くまで戻ったというが、今後の見通しは不明だ。それでも売り物は生き物。「値段が低くても売らざるを得ない」と話す。

 平井牛が給食に使われているかどうかは分からないが、平井さんは「子どもがおいしいと言ってくれるのが一番うれしい」と給食事業を歓迎している。(大久保直樹、山崎琢也)