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 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いても、感染への警戒態勢を緩めることができないのが、病院に長期入院中の子どもや退院して間もない子どもだ。他人との接触への制限が続く中、情報通信技術(ICT)を活用した支援が子どもたちを孤立から守っている。

 「最近おすすめのユーチューブある?」「カジサック!」。タブレット端末の画面越しに、子どもとの会話がはずむ。

 慢性疾患を抱える子どもたちの自立を支援する、松山市のNPO法人「ラ・ファミリエ」ジョブサロンの事務所。9月下旬、自立支援員の越智彩帆さん(26)が、ビデオ通話で割り算や漢字を教えていた。

 相手は夏前に長期入院から退院した小学4年生の女の子。クイズのアプリを使って漢字の読み方を覚えたり、ペイントアプリで自分の顔を元にした絵を作ったり。入院中に知った好きなユーチューバーの雑談も織り交ぜつつ、越智さんと数科目の課題に取り組んだ。

 法人は2015年から学習支援に携わる。対象は、入院中の子や、退院後に学校の授業についていけるよう支援が必要な子たち。週に数回、支援員やボランティアが病室のベッド横や自宅に出向き、勉強を教えてきた。

 ボランティアは、愛媛大の医学部生や教育学部生を中心とした学生たちだ。勉強を教えるのはもちろん、話し相手としての役割も大きい。ジョブサロンマネジャーの西朋子さん(49)は「年が近いこともあり、医者や親には言えない治療のつらさや本音をポロッとこぼしてくれる」と、学生との時間の大切さを話す。

 しかし、新型コロナの感染が広まり、県内の主要病院の多くは今も、家族以外の面会中止が続く。退院して自宅療養している子も同様だ。大学では学生の対面でのボランティア活動を制限しており、ラ・ファミリエでは従来の活動が続けられなくなった。

 そこで、オンラインでの学習支援に全面的に移行することにした。2年前から自宅が遠い一部の子どもの支援用にタブレットの購入を進めていたこともあり、必要機器のない家庭には貸し出すこともできる。学生ボランティアの研修もオンラインで実施。現在、小学生から高校生までの約10人が、遠隔でサポートを受けている。

 ただ、オンラインでの活動には限界もあるという。

 「なんでできんの、とけんかみたいになってしまう」。越智さんが女の子に勉強を教えている途中、画面の向こうで母親がこぼした。越智さんは母親の相談に乗りつつ、「辛いね」「でもここは得意やったやろ」と女の子を励ました。

 入院中はもちろん、退院後も、子どもたちは治療や食事制限のストレスを抱える。家の状況、モチベーション、体調……。「少しでも息抜きの時間になれば」と、支援員は子どもの様子を見極め、臨機応変に接し方を変え、時には親子の緩衝材になる。女の子の母親も「(娘は)越智さんと話す時間を楽しみにしている」と話す。

 こうしたサポートを続けるには、子どもやその家族と支援員やボランティアが信頼関係を築くことが不可欠だ。しかし、オンラインでしか活動できない今、これまで通りにはいかない。マネジャーの西さんは「会っていない人どうしでは、本音が吐き出しにくい。やっぱり、顔を合わせるのが人間関係をつくる基本」と話し、対面での活動が「絶対必要」と感じている。

 年齢が低い子や、耳で話を聞くことが苦手な子への対応が難しいという問題もある。オンラインでの活動を本格化させつつも、西さんたちは元の活動に戻れる日を待ち望んでいる。(足立菜摘)