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 音声入りのトーキー以前のサイレント(無声)映画を、ピアノの伴奏とともに楽しむ上映会が7、8両日、横浜シネマリン(横浜市中区)で開かれる。時に激しく、時にしっとりと。映画のシーンに合わせて表情を変えるピアノの旋律が、35ミリフィルムの味のあるモノクロの映像に彩りを添える。

 上映作品は両日とも、溝口健二監督、入江たか子主演の「瀧(たき)の白糸(しらいと)」(1933年、105分)。入江演じる水芸の太夫は、興行先で出会った貧しい青年を愛するようになる。青年が法曹界に進むために仕送りをするが、青年のための金をだまし取られて逆上し、高利貸を刺殺してしまう。彼女を罰するために法廷に立った検事は、成長した青年その人だった……。

 ピアノ伴奏を務めるのは、国内では珍しい無声映画専門ピアニストの柳下(やなした)美恵さん=神奈川県鎌倉市在住。無声映画というと活動弁士を連想しがちだが、柳下さんによると、欧米ではピアノやオルガン、小編成の楽団の伴奏つきで楽しむのが一般的という。

 柳下さんは95年のデビュー以来、国内外の700以上の作品に伴奏をつけた。封切り時の楽譜が残る作品はほとんどない。柳下さんは最初、シーンに合う曲の楽譜集から選んで使っていたが、作曲者がバラバラで統一感がなく、次第に自ら曲を作るようになった。やがてスクリーンを見ながらの即興が増え、今はほとんど即興という。「伴奏は映画に集中してもらうための空気のような存在でありたい。上映後、伴奏者がいたんだと気づいてもらうのが理想です」と語る。

 柳下さんが同館で正式に伴奏をするのは、全面改装して再オープンした2014年12月以来となる。当時はピアノを近くの映画館「シネマ・ジャック&ベティ」から借り、小津安二郎監督の「青春の夢いまいづこ」(1932年)を上映した。約100人の観客で満席となり、支配人の八幡(やわた)温子さん(64)の元に「またやってほしい」という声が複数届いたという。

 常設のピアノがないためにその後は実現しなかったが、昨年7月、横浜市内の調律師が中古のピアノを寄贈してくれた。そして同館の新シリーズ「ピアノdeフィルム」が誕生した。今回はその初回となる。今後も年2回、35ミリフィルムの無声映画をピアノ伴奏つきで上映していく考えで、次回は来年2月13、14両日を予定している。八幡さんは「ピアノ伴奏は映画の世界を広げ、想像力を豊かにしてくれる。ぜひ体験してほしい」と話す。

 上映は7、8両日とも午後1時15分から。料金は一律2千円。問い合わせは、同館(045・341・3180)へ。(茂木克信)

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