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 舘野泉が84歳となる今月、デビュー60年記念のリサイタルを開く。作曲家、演奏家、聴衆。コロナ禍で失われた三者のシンプルな循環を、いま一度取り戻すための新たな一歩に、と前を向く。

 65歳の時、舞台上で倒れ、脳出血と診断された。2年半の闘病ののち、「左手のピアニスト」として再起した。「70代が青春だった」と振り返るほど、暗い気持ちになったことがない。弾けないのは仕方ない。音楽はきっと、自分のところに戻ってくる。そんな確信があった。「ゼロ地点のすがすがしさを味わったのは、すべて焼けちゃった戦後の混乱期以来のことでした」

 そんな舘野ですら、ここ半年、かつてない閉塞(へいそく)感に沈んだという。「遠藤周作の『沈黙』の、隠れキリシタンみたいな気持ち。祈るしかないんだね、こういう時は」

 いまは1曲1曲をゆっくりかみ…

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