菜の花畑での結婚式体験を元にした絵本完成 神戸の作家

青瀬健
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 神戸市在住の絵本作家・金澤麻由子さん(39)が新作「さすらいのルーロット」を書き上げ、このほど発売された。ルーロットとは、実在する移動式チャペルのこと。多くの人々の協力を得て、念願だった菜の花畑での結婚式を挙げるまでの実体験を元にしたストーリーだ。

 2017年に結婚が決まった金澤さん。かつて絵本を描くため菜の花畑に取材に訪れ、その美しさにひかれて大好きになった。

 その秋、神戸市西区に借りた畑に菜の花の種をまいたが、寒くて育たなかった。式まで1カ月となった頃には、農家に分けてもらって苗を植え始めたものの、慣れない農作業は進まなかった。

 見かねた近隣の農家が仲間に声をかけてくれ、式1週間前の18年4月1日、持ち寄った苗を植え替えてくれた。一気に出現した1500平方メートルの菜の花畑。式当日は朝からひょうが降ったが、開式直前には快晴に。親族と友人20人ほどで開く予定だったが、近隣住民らも駆けつけ60人ほどに祝ってもらった。

 作品では、そうした体験を生かしたストーリーを構成。ルーロットを擬人化させ、挙式を控えた猫のカップルとの交流を描いた。

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 金澤さんは高校卒業後、油絵を学ぶため京都市の芸術大学に進んだ。しかし手応えのあるテーマに巡り合えず、あせりの中で人を傷つけかねない過激な映像表現に走るなど迷いが生じた。そんな時に哲学と出会い、人間とは何かを深く自問することになった。

 そのうち、恩師から絵本の制作を勧められた。「自分の内面や心情を、絵のスキルで描ける」。表現者としての可能性を見いだした。ただ、単なる私小説だと自己満足に終わる可能性があるため、人間の普遍性を描くよう心がけた。

 大学院生時代、犬のパグを題材にした「ぼくぱぐ」を制作。捨てられたパグは飼い犬を見かけて憧れる。首輪があれば幸せになると思い探し回ったパグが最後に見つけたものは――というストーリーだ。テーマは「所有と束縛」。すぐには販売に至らなかった。

 デビュー作となったのは、11年に富山県射水市大島絵本館のコンクールで最優秀の文部科学大臣賞を受けた「てんからのおくりもの」。母親とはぐれた子鹿と、一緒に長い冬を過ごした年老いたテンのお話だ。こちらは「出会いと別れ」に焦点をあてた。

 その後、「ぼくぱぐ」は神戸市の出版社「出版ワークス」から出された。続いて白い羊の群れの中で自分だけが黒いことに悩む犬を題材にした「ポワン」も同社が発行。「自立と孤立」に注目した。

 そして絵もストーリーも自作の絵本として4作目になるのが、今回の「さすらいのルーロット」。これらの作品の読み聞かせが22日午前10時半、同市須磨区の「井戸書店」(078・732・0726)である。絵本の問い合わせは「出版ワークス」(078・200・4106)。(青瀬健)