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 米大統領選は投票日から2日が過ぎても、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が激しく競り合い、決着がついていない。勝敗を左右する複数の激戦州で、集計が遅れたためだ。なぜ、そんなに時間がかかるのか。

 「too close to call」(わずかな差で予断を許さない)

 現地時間の5日(日本時間6日)、米テレビ局の多くがこう繰り返した。ジョージア州やネバダ州、ペンシルベニア州などの激戦州で勝敗が決まっていないことを受けたコメントだった。

 開票は投票日の夜に各州で始まり、集計に数日かかるのは毎回のことだ。ただ従来は当日夜に大勢が判明してきた。今回は激戦州での差がわずかで、勝敗を判断できない状態が続いた。

 米国では州ごとに投開票の運用が異なり、集計のスピードに差が出た。原因の一つが、新型コロナウイルスの影響で郵便投票が急増したことだ。フロリダ大のマイケル・マクドナルド教授の集計では、期日前に投票した人は全米で1億人を超え、うち郵便投票は約6500万人に上った。16年の総投票数の約47%にあたり、増加が著しい。

 ペンシルベニア州は4年前に郵便投票が4%にすぎなかったが、今回は大幅に増えた。同州やウィスコンシン州、ミシガン州では、投票日の当日か直前まで開票ができないことも響いた。郵便投票では、封書に記された署名を有権者情報と照合したり、用紙を読み取れるよう平らにしたりする準備が必要で、投票所での投票よりも集計に向けた作業の手間がかかる。

 また、開票が遅れているネバダ州の選管当局は4日、郵便投票の受け取りは翌週まで続くため、結果を早期に出すのが難しいと説明した。ここでは投票日の3日までの消印があれば「有効」としていることも、時間がかかる要因となった。

 ほかにも水道管が破裂して浸水で集計が遅れたり、読み取り機の故障や不具合で手作業に切り替えたりした事例も報道された。

 結果が判然としない状況が続くなか、トランプ陣営は集計作業の停止などを求めている。これに対し、バイデン氏の支持者は各地で「すべての票の集計を」と抗議デモを繰り広げて、にらみ合いが続く。激戦州の開票作業への注目とプレッシャーは強まっている。

 一方、過去の教訓から開票作業の改善を図ったのが、2000年の大統領選で再集計をめぐる両陣営の争いが1カ月以上も決着せず、全米から注目を集めたフロリダ州だ。

 同州では2年前にも、「苦い過去」の記憶がよみがえった。地元紙サン・センチネルによると、中間選挙で機器の故障があり、州全体で3回の再集計を迫られた。連邦裁判所の判事からは「世界の笑いぐさ」との批判も受けた。

 こうした事態を回避しようと、州は投票用紙のデザインを変更したり、同時に複数の集計ができる機器を導入したりした。

 郵便投票も00年以降に拡充。16年の前回選挙では全体の約27%を占め、経験を積んだ。

 そして今回、郵便投票で投票日の40日前から、署名の照合などの事前準備を始めた。大票田での接戦に変わりはなかったが、投票日の翌日未明に「トランプ氏勝利」の結果が出た。(ワシントン=野上英文)