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アナザーノート 大月規義編集委員

 東日本大震災の復興の取材現場を歩いていると、被災したばかりの当時が、頭の中によみがえることがあります。映画「君の名は。」ではありませんが、いつか忘れてしまうのかもしれないという不安にも駆られます。

 「コワシテ下さい」

 崩れかけた家の白い壁には、スプレーで吹き付けたような黒い大きな文字でそう書かれていました。2011年5月15日、福島県南相馬市の沿岸部を訪れたときの光景です。津波に襲われた跡に、がれきが広がっていました。壁や屋根などが一部でも残っている建物は珍しかったほどです。

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 爆発した東京電力福島第一原発から近く、被曝(ひばく)の恐れがあるため、震災から2カ月たっても、がれきを撤去する作業はほとんど行われていませんでした。粉じんと腐敗臭が立ちこめる中、自宅を壊してほしいと書いた心境はどんなものか……。カメラのシャッターを切りながら、悲しい気持ちに包まれました。

消えた地獄図

 この記憶が今年9月中旬、南相馬市に新設された「福島ロボットテストフィールド」(ロボテス)を訪れたときによみがえりました。激しい津波が襲った場所に建てられ、敷地は約50ヘクタールと東京ドーム11個分に相当します。

 ロボテスでは、企業や国の研究機関など約20団体が最新鋭のロボットの開発や実験にいそしんでいます。経済産業省が原発事故の「おわび」に造った、産業復興をめざす施設です。

 建物からは、実験飛行をするドローンや、東に太平洋、西に阿武隈高地が望めます。9年半前の「地獄絵」は消えています。あの「コワシテ下さい」の家はどのあたりだったのでしょうか?

 10月上旬、平沢勝栄復興相に同行してロボテスを訪れる機会がありました。すこし早く現地に入り、周辺をもう一度歩きました。

 ロボテスから900メートル離れた場所にあった「ヨッシーランド」という介護老人保健施設は、すでに解体されてなくなっています。

 ヨッシーランドには震災当日、利用者と職員が計約200人いたそうですが、津波によって利用者36人が亡くなり、職員1人が行方不明になりました。

拡大する写真・図版かつてヨッシーランドがあった付近から見た福島ロボットテストフィールド(写真奥)。手前は南相馬市が整備している復興工業団地=福島県南相馬市原町区上渋佐、大月規義撮影

 道路を挟んだ西隣はわずかに土地が高くなっていて、大きな被害を逃れた家もあります。73歳になる男性と妻がいまも暮らしているお宅を訪れると、突然のお願いにもかかわらず、当時の話を聞かせてくれました。

 3月11日。大きな揺れがひと…

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