【動画】「現代の名工」に国内最高齢の現役バーテンダーが選ばれた=鵜沼照都撮影
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 卓越した技能を持つ人を国が表彰する「現代の名工」に、山形県酒田市のバーテンダー、井山計一さん(94)が選ばれた。

 「名工ですか? わたしゃバーテンダーですけどね。それに最近は名工じゃないですよ」

 今年に入り、けがなどもありシェーカーはめったに振らなくなった。自身が選ばれた感想について、少し照れ笑いしながら答えた。「ありがたいこと。これをきっかけに酒田を訪れる人が増えるといいですね」

 酒田市中心部にある喫茶・バー「ケルン」のマスター。今は夜のバータイムのみ店に出る。国内最高齢の現役バーテンダーであり、世界中のバーで飲まれているスタンダードカクテル「雪国」の生みの親。まさに業界のレジェンドだ。

 戦後、市内でプロの社交ダンス教師に。仙台市でバーテンダーも始めた。1955年のケルン開業後は二足のわらじを続けた。

 ウォッカ、ホワイト・キュラソーにライムジュースを加え、ミントチェリーを飾り、グラスのふちを砂糖でスノースタイルにした「雪国」を考案。59年に寿屋(現サントリー)主催のカクテルコンクールでグランプリに輝いた。

 94歳の今も、体調が良ければほぼ毎日、店のカウンターに入る。カクテル作りはスタッフに任せ、客と話をするのが何よりの楽しみだ。「昔からおしゃべりが大好きだった。ここの仕事をとったら私にはなにもない。死んだも同じ」

 好きな話題はカクテルよりも酒田の街の話。26(大正15)年生まれで街のにぎわいと共に育ち、「私の歴史は昭和の歴史と一緒」。戦前のにぎわい、戦後の復興、酒田大火、そして現代と酒田の街の歴史を語れるレジェンドでもある。(鵜沼照都)