若者の挑戦の場、きょうで終了 石巻のコモン・シップ

岡本進、志村英司
[PR]

 いつか、自分の店を持ちたい――。若者たちの挑戦の場として宮城県石巻市に仮設の屋台村ができたのは5年半前だ。希望をかなえた人もいれば、夢破れた人もいる。志を応援したいと市内外から人が集った。観光名所にもなったその一角が、震災10年を機に8日、幕を閉じる。

 「Common-Ship橋通り」は、市中心部の旧北上川のほとりの橋通り地区にある。「共有」を意味するCommonに、石巻の将来を語りながら同じ船(Ship)に乗って目標に突き進もうという願いが込められた。広さは約760平方メートルで、コンテナやトレーラーハウスに現在は五つの飲食店が入る。

 営業中の「自然食食堂さん」の佐々木亮介さん(35)は「お客さんの『おいしい』の声が商売を続ける自信になった」と手応えを感じる。管理栄養士の資格を持ち、昨春からの1年半、添加物や白砂糖などを使わないメニューを提供してきた。市内で自分の店を出す夢を描く。

 前身の「橋通りCommon」がオープンしたのは2015年4月。市街地に震災前のにぎわいを取り戻したいと、石巻のまちづくり会社「街づくりまんぼう」が民有地を活用し、起業をめざす若手らに低家賃で貸した。

 当初は1年半ほどで閉める予定だったが、「続けて欲しい」との利用者の要望を受けて、17年11月まで延長。いったん終えたが、その後も惜しむ声が絶えず、18年4月に再オープンした。

 足かけ5年半で10万人以上が訪れたという。市外からの移住者も含め、延べ18店がここで営業し、このうち5店が市内に店を開いて独立した。

 その1人、木下智也さん(32)は16年7月から1年ほどコモンで店を続けた。長面(ながつら)湾の近くにあった実家の旅館は津波で流され、母親を失った。松島町のホテルに務めていた木下さんが、いずれ継ぐつもりだった。コモンの店で出した新鮮な刺し身や天ぷら、ホヤをつかったおにぎりが評判となり、18年1月に市中心部に和食店を構えた。

 壁や床の改装は、コモンの仲間たちが手伝ってくれた。「コモンの店は吹きさらしで冬は寒く、経営もずっと赤字。でも、多くの人たちとつながることができ、今も支えられている」と木下さんは感謝する。

 橋通り地区周辺は、旧北上川をまたぐ橋が9月に架け替えられるなど、新たな街づくりが進む。もともとは短期で想定した事業のため、震災10年を前に閉じることになった。街づくりまんぼうの担当者の苅谷智大(ともひろ)さん(34)は「コモンのこれまでの交流を生かした新しい取り組みを探りたい」と話す。

 最終日の8日は、脇の道が歩行者天国となり、音楽ライブで盛り上げる。来場者全員で乾杯する予定だ。(岡本進、志村英司)