[PR]

 新型コロナの流行が収まらないなか、修学旅行が様変わりしている。やむなく中止した学校がある一方で、「オンライン修学旅行」で海外の街角の空気にふれたり、「Go To トラベル」を利用したりする学校も。子どもたちの特別な思い出になるよう、教員らは制約がある中で知恵を絞っている。

 10月24日の朝。東京の練馬区立石神井台小と調布市立多摩川小の教室からつないだオンライン会議システム「Zoom」の画面には、米ニューヨーク(NY)の街並みが映し出された。時差は13時間。現地は金曜の夜8時前だ。

 「ここはマンハッタンのタイムズスクエア。ギラギラ光るあの広告、ひと月いくらでしょう」

 6年生の子どもたちへ画面越しにこんなクイズを出したのは、ニューヨーク育英学園の中村健人(たけと)教諭。子どもたちは「1億円」「100万円」とチャット欄に入力する。「正解は、一番安くて30万ドル。日本円だと約3千万円です」

 中村さんは同僚と街を歩きながら、コロナや米大統領選挙などさまざまな話題について、日本の子どもたちとやりとりする。屋台でホットドッグを買ったり、マクドナルドに立ち寄ったり。最後はグランドセントラル駅に移動し、天井に星座が描かれた重厚な駅舎を映して、1時間あまりの「旅」を締めくくった。

 きっかけは、石神井台小の主任教諭・二川佳祐(ふたかわけいすけ)さん(34)が、コロナ下でもできるオンライン観光についてブログで発信していた小学校非常勤講師の平川暢(とおる)さん(32)に「オンライン修学旅行やりませんか」と声をかけたことだ。

 二川さんは6年生の担任で、9月に千葉へ行くはずの移動教室が中止に。子どもたちのために何かできないかと考えていた。多摩川小の指導教諭・庄子寛之さん(37)ら各地の教員とSNSで連携の輪が広がり、実現した。

 9月には、シンガポールや香港と中継を結んだ。現地の日本人学校の教員らがガイドになり、コンビニや観光名所を紹介。路面電車や船に乗る様子を見せてくれた。二川さんは「世界とつながる体験は、子どもの心に響いている。ユーチューブの配信動画と違い、その場で質問できるライブ感も楽しいようだ」と話す。

 Zoom操作や司会など「案内人」役を務めた平川さんも「実際の旅行の代替にはならないが、紹介した国や地域とは心の距離が近くなる。将来行きたくなった、という感想も多い」と手応えを語る。

 先月16日には「オンライン平和学習」もした。被爆3世のウェブデザイナー、久保田涼子さんが広島の原爆ドームを背景に、画面越しの子どもたちにこう語りかけた。「私のおばあちゃんは20歳の時に原爆に遭った。75年前は歴史の話じゃないんです。この機会にぜひ広島のことを知ってほしい」。ガイド歴20年の女性は、「以前ここには街があり、カフェや映画館でにぎわっていました」「あの時計塔は、原爆投下時刻の朝8時15分に毎日鐘が鳴ります」などと説明しながら、平和記念公園を案内した。

 企業が生徒らを「旅先」へ案内する企画もある。テレビ朝日の「バーチャル修学旅行で歴史を学ぼう 広島・長崎・沖縄」も、その一つだ。10月24日、核兵器の開発や製造、保有、使用などを全面的に禁じる核兵器禁止条約の批准国・地域が50に達し、条約の発効が来年1月に決まった。その記念すべき日、バーチャル修学旅行に全国の中学・高校25校の約700人が、各教室から参加した。

 ライブで画面から語りかけたのは、広島で被爆したカナダ在住のサーロー節子さん(88)。条約採択への推進役でノーベル平和賞も受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)とともに、各国のリーダーたちに批准を求める手紙を書いてきた。

 被爆当時の写真を示しながら、「75年たっても、人間が人間の姿でなくなっていたあの日の光景は目に焼き付いている」「広島や長崎の話だけじゃなく、ビキニも同じ。核は絶対になくさなければ」と語った。長崎県出身の被爆2世でサッカー日本代表監督の森保一さんや、沖縄出身のタレント、りゅうちぇるさんらも登場した。

 私立東京女子学園高校(東京都港区)の2年生約70人もiPadで参加。広島で暮らしたことがある渡辺理菜さん(17)は、「東京では戦争の話を聞くことがないと感じていた。修学旅行には行けなかったけど、通常では会えない方のお話を聞けて、みんなと平和の大切さを実感できて良かった」と言う。

 久保敦・校長補佐は「ありがたい企画だ。本校でもこれを機に独自に、フィリピンのごみの山で暮らす子たちとつなぐオンラインワークショップや、ハワイのオンライン学習会などを企画したい」と話した。

 同じく参加した南山高校女子部や広島女学院高校などでは、この後も、平和教育について交流を進めていく予定。テレビ朝日では、坂本龍馬をめぐる修学旅行なども計画している。(西村悠輔、宮坂麻子)

「3密」避け、24畳の部屋に4人

 日程や行き先の変更を余儀なくされたものの、国の観光支援策「Go To トラベル」の利用で、思いがけず豪華な修学旅行となった学校もある。

 神戸市灘区の市立鷹匠(たかし…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。

【1/25まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら