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 卓越した技能者を表彰する「現代の名工」に、新潟県内から5人が選ばれた。その一人、肥田野尚之さん(62)は料理人として技術を磨いただけでなく、包丁を自作し、氷彫刻まで名人級という多能な名工だった。

 1874年の創業、新潟市を代表する老舗ホテル・イタリア軒の最高料理顧問だ。40年以上にわたって洋食の技を磨き続け、野鳥獣の肉を使ったジビエ料理を人気の品に押し上げた。

 小学生の頃から料理好き。自分で揚げパンやドーナツを作って兄や友人に振る舞い、共働きの両親のために夕食を用意した。料理人をめざしたのは自然の流れだったという。

 調理師学校を出て、1978年にイタリア軒に就職すると、「よりうまく、速く」と眠る間も惜しんで技術を高めた。95年には修業のためにフランスへ。「退職してでも行く」と料理長を直談判で説得し、本場に単身飛び込んだという。

 「凝り性で負けず嫌い」と自己分析する。その言葉通り、フランス料理で重要な野鳥獣の肉にこだわって、自ら狩猟免許も取得。血抜きや肉の熟成に関する知識も深め、ジビエ料理はイタリア軒の冬の定番メニューになった。「料理は全て得意だけど、ジビエは腕の良い料理人にも負けない」と話す。

 レストランを華やかにする氷彫刻にも凝った。独学で磨いた技術は、国際大会で準優勝するまでに。その技を広めようと、県内の料理人向けに催した氷彫刻の練習会は、これまでに50回を超す。世界大会の優勝者も輩出した。

 若手の育成は、「料理への恩返し」。ジビエ料理の勉強会も開いている。「人に教えることは自分の技を見直すこと」と話す。

 最も大事な技術は、「切ること」。切り方一つで味が変わる。だから、包丁も自作する。「刺し身の切り口を一目見れば、料理人の腕が分かる」。今も高みをめざしている。(小川聡仁)

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