吉川喬、田辺拓也
ドライバーに交通安全を呼びかける、コントの一幕のような看板が岡山市内で目立っている。工事現場の交通誘導などを業務とする会社が企画したもので、イメージはとにかく明るくて軽い。きっかけには、2年前の従業員の事故死があった。
警備員2人が歯を見せながら呼びかける《お酒飲んだら運転しちゃダメでしょー》。ふさぎ込む同僚の肩に手を置き、警備員が諭す《シートベルトしないからフられたんだって?》。
設置したのは岡山市北区の「KIG」。昨年7月からJR岡山駅近くや幹線道路沿いなどに設置し、今は20カ所に広がった。「記憶に残りやすく心も和む」「クセが強い」などSNSでも話題だ。
きっかけは2018年12月、当時35歳のアルバイト従業員だった男性の交通事故。勤務時間外に自転車に乗っていたところ、岡山市北区大元2丁目の県道で軽乗用車と衝突し、亡くなった。
田代康介社長(36)によると、男性は信頼の置ける働きぶりで、事故直前には事務所で同僚らと談笑していたという。この後、「1件でも交通事故を減らしたい」と思いついたのが看板だった。
ありきたりの看板ならドライバーに伝わらない。どうすれば気に留めてもらえるか――。デザイン会社と協議するなど知恵を絞り、あえて面白く、既成の概念を壊すことにこだわった。モデルは出演希望が相次いだ従業員らが担った。
社内でアイデアを募り、あおり運転や「ながら運転」の防止を訴えるものなど新たな内容を加えている。田代社長は「交通安全への心がけが少しでも広がれば。ただ、看板が気になっても脇見運転は控えて」と呼びかけている。
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看板が市民の交通安全意識の高揚に役立っているとして、岡山西署などは9月、KIGを交通安全功労団体として表彰し、感謝状を贈った。同署交通課の藤原隆志交通官は「パトロール中、管内のあちこちで看板を目にするため署員の間で話題になっていた。交通安全の啓発の効果を期待しています」と話した。(吉川喬、田辺拓也)
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朝日新聞社会部