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 4年前の鳥取県中部地震を機に県が条例で制度化した「災害ケースマネジメント」。災害発生後の一人ひとりの生活の復興にどう寄り添うか。大規模災害が頻発する中、取り組みに注目が集まっている。

 「今年も屋根が直らないまま地震4年を迎えていたかもしれない」。倉吉市の矢城良太郎さん(75)は、9月下旬に修繕したばかりの屋根を見つめて、安堵(あんど)した様子で息をついた。

 自宅は震度6弱の揺れに見舞われた。屋根のしゃちほこは落下。北側の屋根が崩れ、瓦が今にも落ちそうな状態が続いていた。業者に修繕依頼をしていたが話が進まず、凍結状態になったまま。屋根の近くでは、購入したヘルメットを身につけて歩いていた。

 修繕への道筋となったのが、県や市町が取り組む鳥取県版災害ケースマネジメント「生活復興支援」だった。県から委託を受けた震災復興活動支援センターの職員らが年明けに矢城さん宅を訪れ、「何に困っているのか」「どういう解決策が最善なのか」など、行政の支援制度なども紹介しながら、具体的に案を提示して生活復興を後押し。

 センター職員の訪問以来、矢城さんは悩んでいた屋根の修繕について、費用面、求める修復度合いなどから、最適な方法の検討を何度も重ねてきた。「もう本当にどうしたらいいかと頭を抱えていたときに訪ねてくれて。ありがたかった」

 災害ケースマネジメントは、被災者一人ひとりの生活全体の状況を把握し、それぞれの課題に応じて、官民が連携して、個別に支援策を考えていく取り組み。

 先行自治体はあった。東日本大震災で被災した仙台市が最初に取り組んだ。熊本地震、西日本豪雨の現場でも採用された。ただ条例化して恒久的な仕組みとしたのは鳥取県が初めてだ。中部地震後の2018年に防災危機管理基本条例を改正する形で明記した。

 中部地震は死者こそいなかったものの、一部損壊が1万5千棟余りに及ぶなど住宅被害の多さが目立った。県は、損壊率の低い世帯であっても補助金などが受けられるよう幅広い支援を講じた。それでも、地震1年後にブルーシートのかかる世帯は5%(約900世帯)残った。支援制度を知らなかったり、手続きの方法がわからなかったりする人たちとみられる。

 課題は、「5%」の世帯に代表されるような、制度はあるのに、そこからこぼれ落ちる人々をどうするかだった。サポートするのは住宅の修繕だけではない。借金で悩む人には弁護士を、高齢世帯には保健師が訪問して介護予防サービスを受けてもらう。

 センターではこれまで139世帯を復興支援対象として対応してきた。

 県の災害ケースマネジメントの主な流れは、①センター職員らが被災世帯に訪問し実態を把握する②支援が必要と判断した世帯に個々にプランを作成する③支援内容に応じて専門家などで作る生活復興支援チームを派遣する、というもの。支援チームの構成は建築業やボランティアグループなど多岐にわたる。

 3人の子どもと暮らす湯梨浜町の女性(51)は、借家の雨漏りに悩んでいたところから支援を受けるようになった。以来、自身の健康面や引っ越し先といった暮らしの相談に至るまで、センターとやりとりを続けている。「生活が難しくなったときに身内より親身になってくれる存在。本当に助かっている」

 センター主任企画員の白鳥孝太さん(48)は、阪神淡路大震災、東日本大震災と被災者支援に尽力してきた。その実体験として、「予期せずに被災者となってパニック状態になっている中で、自分の意思がわからなくなる人も多い」と話す。「制度を作って終わりではなく、『どうしたい』が出てこない人に対して『どうしましょうか』という共感から、一緒に考えていく過程が何より必要」と訴える。

 こうした取り組みを平時から策定しておく動きは広がりつつある。南海トラフ地震で甚大な被害が想定される徳島県では、鳥取県の例などを参考に検討を進めているという。

 日本弁護士連合会災害復興支援委員長の津久井進弁護士は「行政が責任を持ち制度化することは災害時の教訓を恒久化するという点で非常に先進的な取り組み」と評価し、国や各自治体の早期制度化を訴える。(矢田文)

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