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 東日本大震災では84人が犠牲となった宮城県石巻市立大川小学校をはじめ、多くの学校が津波被害を受けた。文部科学省が津波を想定した学校危機管理マニュアルの策定を促す中、県内でも沿岸部を中心に避難計画の見直しなどが進んでいる。

 静岡市立中島小・中学校は堤防からわずか100メートル。大規模地震発生時、津波で1~2メートル浸水すると想定されている。年6回の防災訓練では中学の全生徒約200人が、まず3階ホールに集合し、点呼後に屋上に垂直避難する。

 さらに総合的な学習の時間も使って、防災教育に力を入れている。今年度は生徒が災害時の備えをまとめる「家庭用非常時チェックリスト」を作った。

 今月2日、1年生61人が2~5人の班に分かれて災害時に必要なものを話し合った。持ち出し品を避難時に携行する「1次」と、避難後に自宅や避難所で必要になる「2次」に分け、家具転倒防止など事前の対策を「その他」にまとめた。

 生徒たちは首相官邸や日本赤十字社のリストを比較。共通するものに蛍光ペンを引き、「必携品」を洗い出した。「こっちのリストにはベビーカー、こっちにはだっこひもと書いてあるよ」「持ち運ぶなら、だっこひもの方が便利だよね」

 乾パンや懐中電灯といった各家庭共通で必要な物のほか、女性がいる家庭に必要な生理用品や化粧品、子どもがいる家庭に必要なおむつや粉ミルクなど、家族構成に応じた必需品を整理した。

 北川龍之介君は「家族によって必要なものが違うと知った」。武岡宙君は「各家庭で準備することを想定して本当に必要なものを絞り込みたい」と話した。

 各班のリストをクラスでまとめた後、学年委員会で最終案を決定。リストを基に、校区内の家庭で備蓄品をチェックしてもらい、1月中をめどに分析結果を自治会連合会に報告する予定だ。

 中島小・中学校は2011年の東日本大震災以降、津波対策を中心とした防災教育に力を注いできた。17年度からは、総合的な学習の時間を防災教育に充て「自助」「共助」「公助」と段階的に学びを深める学習を本格化。今年の中学1年生は、小学校高学年の時にブロック塀や電柱など、避難時に注意が必要な場所を書き込んだ地域のハザードマップを作成した。

 中学では学校にいる時間に地震が起きることを想定したグループ研究に取り組んだ。備蓄の種類や量、保管場所を考える「備蓄品」、避難者のプライバシーの確保やトイレの設置方法などを検討する「校舎の使い方」、近隣住民が何人避難してくるかを調査する「避難実態」の3グループに分かれて研究を進め、結果を校長や町内会長、区役所職員に提案するという。

 同校の横井利夫校長は「防災を通して命の大切さを自分事として考え、自分の意見を持ち、判断して行動する力を身につけてほしい」と話している。(広瀬萌恵)

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 沿岸部の学校を中心に、津波避難計画の見直しも進んでいる。

 津波浸水想定区域に3小学校1中学校がある牧之原市の教育委員会は17年、学校の避難計画を見直した。以前は地震の揺れが収まったら、子どもたちは校庭に集合していたが、すぐに学校の最上階や屋上に垂直避難する、と改めた。

 相良中学校では今年9月、学校(海抜4メートル)から約700メートル離れた大沢公園(同9・6メートル)に避難する実験があった。垂直避難では、水が引くまで学校が孤立する恐れがあるからだ。370人が一般道を歩き、全員の避難完了まで16分44秒かかった。今後、津波到達予想時間によっては、校舎を離れ大沢公園や相良総合グラウンド(同10メートル)まで避難することも検討するという。

 沼津市では救命胴衣の着用訓練があった。海岸から100メートルの市立戸田小学校は海抜2メートル。予想される津波の最大高は5・1メートルで、到達予想時間はわずか4分だ。

 子どもたちは地震発生後、まず3階建て校舎の屋上(海抜14・3メートル)に避難し、備えてある救命胴衣を着用する。年3回の抜き打ち避難訓練では、4分以内の着用をめざす。

 小中22校中5校が津波浸水想定区域内にある焼津市の教育委員会は共通の避難規定を作った。「揺れが収まったら、校舎最上階に垂直避難する」「子どもを保護者に引き渡すのは津波警報解除後にする」。学校より海に近い自宅に戻り、子どもが犠牲になるのを防ぐのがねらいという。(阿久沢悦子)

 〈学校の危機管理マニュアル〉 東日本大震災による津波をめぐり、宮城県石巻市立大川小学校で犠牲になった児童の遺族が市と県に損害賠償を求めた裁判で2019年10月、遺族の勝訴が確定した。判決は学校が危機管理マニュアルを改訂していれば犠牲は避けられたと結論づけた。

 マニュアルの作成は09年の法改正で全ての学校に義務づけられた。静岡県教委は14年、「学校危機管理マニュアル作成の手引き」を策定。毎年改訂を重ね、「沿岸部での活動中に地震が発生した場合は情報を待たずに避難を開始」など留意事項を示している。手引きは各学校に通知しているが、マニュアルの内容は各学校に委ねられている。

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