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 新型コロナウイルスの影響で各地の祭りなどが中止になる中、福井県大野市が、受け継がれてきた民俗芸能を動画で撮影し、インターネットなどで配信する取り組みを進めている。民俗芸能の魅力に触れる機会を増やし、保存や継承を後押しするのが狙い。観光PRにも活用するという。

 今月1日、大野市伏石(ぶくいし)の寺の境内に、伸びやかな歌声と太鼓の音が響いた。すげ笠と衣装を身につけた人々の踊りの輪が見える。

 ビデオカメラの前で披露されているのは、県無形民俗文化財に指定されている「神子踊(かんこおどり)」だ。「カンコ」と呼ばれる太鼓(胴の長さ45センチ、直径30センチほど)を持った人が、音頭取りの歌にあわせて太鼓を打つ。残りの人が手にした扇をひらり、ひらりとかざす。

 神子踊は、市北東部に広がる五箇地区のうち、上打波地域の集落に伝わる踊り。その起源には「白山を開いた奈良時代の僧・泰澄に披露した」や「平家の人々が都を慕って踊った」などの説がある。「一晩中踊っても同じ文句を繰り返さなくてもよい」と言われるほど歌の数が多く、歌詞には、暮らしや男女の恋などが盛り込まれている。

 1970年代前半までは、集落の人々が神社などで夜通し踊ったという。過疎化が進んだ今は、出身者が中心の保存会が受け継ぎ、夏の「おおの城まつり」などで踊ってきた。今年はまつりが中止になり、撮影に臨むことにした。

 撮影は、市の「心をひとつにおどり結び事業」の一環。保存会のメンバーはこの日、神子踊と、宴席などで披露する「ねこのこおどり」を踊った。幅口隆一会長(82)は「踊りの輪は人々の絆を確かめあう場。記録に残すことができてよかった」と笑顔を見せた。

 市は、神子踊や、農作業のしぐさを取り入れた「しぐさ踊り」、旧和泉村(現在の大野市東部)に伝わる「穴馬民謡」など、計16の民俗芸能を撮影。以前に撮影した四つも含め、来年1月末までにDVDをつくって保存団体に配り、「ユーチューブ」で配信する計画だ。来春に開業予定の道の駅「越前おおの 荒島の郷」でも公開するという。

 事業を担当する市教育委員会生涯学習課の水上勝・企画主査は「地域に残る踊りなどを続けていく励みになれば」と話している。(八百板一平)

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