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 鼻づまりはないのに、突然においが分からなくなることが、新型コロナウイルス感染の初期症状として注目されている。なぜ、そのような症状が起きるのか。

 嗅覚(きゅうかく)障害に詳しい、東京大病院の近藤健二・准教授(耳鼻咽喉(いんこう)科)(http://utokyo-ent.org/dept/member/kondo-k/)別ウインドウで開きますは「風邪をひいた人が、鼻づまりが治ってもにおいが戻らない例は以前からある。しかし、鼻がつまっていないのに、においだけ感じなくなるという症例は新型コロナの特徴といえる」と説明する。イタリアの患者への調査で約8割に嗅覚・味覚障害があったという論文もある。

拡大する写真・図版新型コロナに感染した人の鼻のCT画像

 原因は専門家の間でも議論が続くが、においを感じる仕組みが影響しているとも考えられる。

 人が鼻から息を吸うと、空気は「下鼻甲介(かびこうかい)」と呼ばれるひだの周囲を通って気道や肺へと流れる。風邪の場合は、下鼻甲介が腫れて鼻呼吸ができなくなり、においも分からなくなる。

拡大する写真・図版新型コロナウイルスが嗅覚に影響をあたえる仕組み

 一方、空気中にあるにおいの分子は「上鼻甲介(じょうびこうかい)」という別のひだの周辺の「嗅裂(きゅうれつ)」にある嗅神経細胞に届くことで、脳に「においの情報」として送られる。近藤さんは「嗅神経細胞が新型コロナからダメージを受け、情報を受け取れなくなっている可能性がある」と説明する。上鼻甲介周辺にある「嗅粘膜」の表面には、新型コロナが侵入しやすいたんぱく質が多くある、という論文もある。

 下鼻甲介周辺に問題がなく、上鼻甲介周辺が炎症を起こしている新型コロナ患者も確認されている。東京都新宿区にある副鼻腔(ふくびくう)炎治療専門クリニックの「新宿耳鼻科」(http://www.shinjukujibika.jp/index.html)別ウインドウで開きますでは、鼻のCT検査を行っている。毛利博久院長によると、嗅覚異常を訴えた9人のCTを撮ったところ、7人が上鼻甲介周辺だけが炎症を起こしていた。7人はその後、新型コロナで陽性と診断された。

 毛利さんは「突然においがしなくなった場合は、いきなり耳鼻科に行かず、電話で症状を伝えるなど、コロナに感染した可能性を意識してほしい」と語る。

 新型コロナによる嗅覚障害は、人によって数カ月治らないのも特徴だ。本来と異なるにおいがする「異嗅症(いきゅうしょう)」という後遺症も確認されている。3月に新型コロナに感染した記者(38)も嗅覚が完治しておらず、卵焼きやコーヒー豆、カレーなどが同じように「焦げ臭い」と感じる。

拡大する写真・図版新型コロナ患者の嗅覚・味覚障害の発症割合と嗅覚障害が完治していない割合

 近藤さんによると、異嗅症はインフルエンザなどでも起こり、焦げたにおいは典型という。神経がダメージを受けても、生命の維持に必要な機能は最後まで残り、「火災の危険」を感じられるようにするためという推測もあるが、詳しい原因は不明という。(今村優莉)