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 今月9日、県内の全35市町村長が仙台市内のホテルで一堂に会した。東北電力女川原発2号機の再稼働について、地元同意するのか――。会議は、村井嘉浩知事がそれを決める際の重要な判断材料とされ、同意手続きの最終関門だった。

 手を挙げた利府町の熊谷大町長が指名され、再稼働に賛成と口火を切った。美里町の相沢清一町長は反対の立場で発言。原発から30キロ圏内にあるUPZの5市町で唯一反対してきた。

 次いで反対の声を上げたのが、加美町の猪股洋文町長だった。「広域避難協定を結んで間もなく4年になるが、一度も図上訓練すらしていない。合意に向けて進むのはいかがなものか」

 会議の冒頭、県側の「避難計画の基本的な部分の実効性は確保されている」との説明にあきれた。「この4年間、何もしていなくて、どこからその言葉が出てくるのか。せめて県がリーダーシップを発揮してアクションをとるべきだ」との思いを込めた。

 ほとんどの首長が賛成して、「1回の会議で結論が出る」(県幹部)。その見立て通りに行くのか。会場の空気が変わり始めた。

 一人をはさんで、「私も基本的に反対だ」と続いたのは、色麻町の早坂利悦町長。加美町と同じく、福島第一原発事故から10年近く、牧草や稲わらなど放射性廃棄物の処理に苦慮してきた。

 「立地市町の議会や県議会が賛成する流れの中で、反対意見を言うのは腹をくくるくらいの覚悟だった」と打ち明ける。会議では「原発からそろそろかじを切るべきではないか」と訴えた。

 この時点で、反対意見は3人。前向きな意見の2人を上回った。反対論が相次ぐ想定外の展開に、別の県幹部は「加美と色麻が、あそこまで明確に言うとは思わなかった」と語る。

 村井知事は、ロの字に並んだテーブルの真正面に座っていた。手元に用意された原稿は、賛成が大勢を占めることを想定し、総意は「賛成でよろしいですか」と首長らに呼びかける内容になっていた。事務方の間では「次はあの首長に意見を言ってもらえば」などと、慌ただしくなった。

 そんな中で発言したのが、知事と関係が近い元県議の首長らだった。

 県議会議長を務めた塩釜市の佐藤光樹市長は「県民が納得する努力をする、安全対策を続けることを前提に、やむなし同意」と賛成した。10月の市長選で村井知事の後押しを受けて初当選した深谷晃祐・多賀城市長も「女川、石巻の立地自治体の皆さんが決断した。しっかりと尊重するべきだ」との考えを示した。

 会議で意見表明した首長は15人。全市町村の半数にも満たなかった。

 100万都市・仙台市の郡和子市長は、県が避難受け入れの指針を示すべきだと指摘したが、賛否は明らかにしなかった。首長の一人は、「政令指定市のトップが『慎重に判断すべきだ』と言えば、県も無視できなかったはず」と語る。

 予定時間を30分以上オーバーしていた。

 「この場で皆さんに賛成か反対かを問うのは難しい」。村井知事はこう述べ、女川町長と石巻市長との3者会談に委ねることを提案、了承を得た。大半の首長が賛否を示さない中、最終判断の一任をアドリブでもぎ取った。

 県が描いた同意シナリオの中で、唯一波乱が起きた市町村長会議。切り抜けた村井知事はその2日後に、同意を表明した。(徳島慎也、志村英司)

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