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 「早く風呂に入ってしまってよ! 洗濯できないじゃない!」。こんな会話、ありますよね。洗濯物がたまるとストレスもたまります。「洗濯」をもっと柔軟に考えてみませんか。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

洗濯の時間、誰が決めた?

 突然ですが、みなさんは洗濯をいつしていますか?

 YouTubeでは、「モーニングルーティン」と呼ばれる朝起きてからやることを動画に撮って投稿するのがはやっているようですね。みなさん、見たことありますか? そこではほとんどの人が朝洗濯機を回して、回っている間に朝食を丁寧に作っているようです。片付いた部屋で、おしゃれな食器で、ていねいな暮らしに憧れのため息が出てしまいます。

 話を洗濯に戻しますと、私たちが憧れる暮らしの中で、洗濯ってなんとなく朝するもののようですね。朝日を浴びてよく乾くからでしょう。朝からベランダに干された洗濯物をみると、「おお! あそこの家の人は、早起きして洗濯したんだな」と尊敬のまなざしを送ってしまいます。なんででしょうね。なんとなく早起きって「すごい」と推奨されるようです。

 でも、こうした「ていねいな暮らし」や「朝型」が合う人ばかりではありません。そうでなくちゃだめだというのが、ただ憧れや楽しみならよいのですが、「呪縛」になっているとしたら、これは早々に見直すべきでしょう。

 幸い、モーニングルーティンはいろんな国の人が投稿していますので、是非見てください。「morning routine」と検索すればたくさんヒットします。国が違えば、文化が違いますね。必ずしも朝に洗濯をするとか、丁寧にご飯を土鍋で炊くとか、朝から素晴らしいみそ汁や魚、野菜が並ぶだけがベストではないことにお気付きいただけるでしょう。もちろん投稿するぐらいですから、現実の何倍も美しく演出されている点にも注意が必要です。

 気付いていただきたいのは、私たちがこの国に生まれて刷り込まれている「こうあらねば」って、けっこうあいまいで、普遍的ではないものだということです。「朝ごはんはこうあるべきだ」「洗濯は朝するべきだ」などがそうです。誰かに明確に要請されたわけでもないのに(ただ、だいたいが身内でしょうね、でも言った本人が覚えていないことも多々ありますし、言った本人の価値観も変わっていきます。こっちがそうすべきだと思い込んでいる場合もあります)、その要請に責任をとってくれるわけでもないのに(だいたい年長者の方が先に亡くなります)、私たちは多くの呪縛に囲まれています。それなら、さっさと「自分に合うやり方」「我が家に合うやり方」に変えてしまいましょう。

 さて、それで洗濯の話なのですが、家族全員分を一気に洗うには家族全員で協力する必要があります。風呂が終わらないと洗濯物が出てこないのです。家族みんなが帰宅して、風呂が終わらないと回せないのが洗濯機。そこから干すなり、乾燥機を使うなりは天候や干す環境で異なるため、そんなにみなさんつまずかれないのです。それよりも、「家族が気ままに風呂に入る」「風呂に入らないまま寝てしまう」なんていうバラバラな行動パターンがネックとなっている事例は多くあります。生活のスタイルにあったやり方をおすすめします。

・汚れた洗濯物をためておきたくないタイプ

 毎日洗濯しないと嫌だという方もいます。この場合、家族には帰宅後すぐに風呂に入ってもらうようにするなど、なんとか風呂を早く済ませて、洗濯機を早い時間から回します。そのため家族の協力が不可欠です。夜のうちに洗濯が終わるので、夕方や朝にバタバタすることはありません。

・別に1日ぐらい放置してもかまわないタイプ

 家族のお仕事や習い事の状況によっては、風呂の時間がバラバラにならざるを得ないかもしれません。こうした場合には、洗濯物が出る時間にかかわらず、洗濯機を回す時間を固定します。たとえば、洗濯担当の人が午後7時に風呂を終えるのなら、そのタイミングで回すのです。その午後7時の時点で出ている洗濯物だけが回されるかんじです。毎日回せば、同じぐらいの量が洗濯できます。

・家族が大人数で何度も回すタイプ

 家族がたくさんいる家庭では、洗濯を3回は回さないといけないということもあるでしょう。夜2回と朝1回みたいなかんじです。家族が多いほど全員がお風呂を終えるのも遅くなるでしょうから、待たずに定時に洗濯をスタートさせるのが賢明でしょう。たとえば午後6時、午後8時、翌日午前6時というかんじです。

・子どもが寝た後に、やっと風呂や家事を始めてしまうタイプ

 子育て中の方にたまにいらっしゃるパターンですが、小さな子どもを寝かしつけてから、夕食の洗い物をしたり、洗濯をまわしたり、自分のご飯や風呂にとりかかる人もいます。それでは時間が絶対的に足りません。家事も自分のルーティン(夕食や風呂)も基本的には子どもの起きている間にやってしまうことをめざしましょう。子どもが寝た瞬間から、自分の自由時間というわけです(もちろん一緒に寝てしまってもそれはそれでぜいたくです)。子どもの起きている時間には、ゆっくりご飯を味わったり、入浴したりすることはままならないとは思います。家事だって、邪魔されてばかりでしょう。でも本来家事は家族みんなで少しずつ分担するものです。家族みんなで起きている時間に分担し合えるように工夫してみましょう。それでも家族が仕事で不在とか、子どもが幼すぎるとか諸事情もあるでしょう。それぞれの家庭でできるところから努力してみましょう。

 今回のポイントは、「自分の知らずに持っていた『洗濯はこうあるべき』という常識を疑って、洗濯時間について柔軟に設定する」でした。

 ◇「年末・年始企画第2弾」

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中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。