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 JR総社駅前の古びた3階建てビル。階段にはレトロな駅名看板、2階のギャラリーには鉄道模型や記念切符など旧国鉄グッズがずらり。国鉄時代の車両がなお現役で走ることで知られるという岡山。7月にオープンした「総社クロスポイント」には、全国から鉄道ファンが訪れる。

 自身の鉄道熱はそれほどでなく、総社で過ごした子どもの頃、列車の写真を撮ったぐらい。3年前、本業で営むアンティークショップの縁で、大量のグッズを託されたのが始まりだった。

 持ち主は、岡山市北区の藤山侃司(かんじ)さん(83)。国鉄の写真を専門誌に提供し続けた知る人ぞ知るコレクターだ。昭和に撮った写真は、3両の蒸気機関車が連なった伯備線の「布原三重連」や、先頭がボンネット形で大阪―宇野(玉野市)を走った特急うずしおなどの往時の力強さを写しだす。

 藤山さんの入院を機に、「これらに価値があるのなら」と家族から寄贈の打診があった。行き先案内のプレートや木製の切符箱、線路脇の信号まで3千点を超す「お宝」を前に、「これはすごい……」とうなった。

 「古いものをバトンのように後世につなぎたい」とは常々思ってきたが、さて、どう活用するか。古物商の嗅覚(きゅうかく)を利かせた答えは「まちづくり」だった。

 長く暮らした岡山市から総社市へ帰った5年前。駅前の通りに軒を連ねていたスーパーやホテル、ボウリング場は姿を消していた。危機感もあってまちづくりに関心を持ち、空き家の利活用の相談や施工を担う事務所も開業。藤山コレクションの扱いも、売ればもうかるだろうが、にぎわいを生み出すアイテムとして活用すべきだと考えた。

 調べてみると、総社と国鉄の縁は深いと分かった。市内を通る伯備線の特急やくもは、国鉄時代の車両「381系」を全国で唯一、現役で使用。市中心部の石原公園にはかつて伯備線を走った蒸気機関車が展示されている。

 鉄道ギャラリーには市内の空き物件を利用しようと5月、有志3人と合同会社「縁社屋(えんじゃや)」を設立。クラウドファンディングで開業資金を募ると、目標の50万円をはるかに超す111万円が全国の85人から寄せられた。

 7月、入場と滞在時間を制限し開業。以降、集客は上々で地元からの来場も多い。国鉄OBが自身のグッズを託しに訪れることもある。

 窓外に駅舎を臨む総社駅は、伯備線が通るほか、吉備線と井原鉄道の起点でもある。「ファンはもちろん、観光客や地元住民の交流拠点、まち歩きの起点としてもここを育てたい」。総社クロスポイントの名には、そんな願いを込めた。(小沢邦男)

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 総社クロスポイント(総社市駅前1丁目、090・6419・1402)は毎週金~月と祝日の午前11時~午後7時にオープン。国鉄グッズのほか、備前市と美咲町の間の約34キロを結んだ片上鉄道(1991年廃線)の車両構図、雑誌「鉄道ファン」創刊号など逸品がずらり。昭和30年代以降の鉄道雑誌、新聞の切り抜き、駅舎の変遷を記録したアルバムなどは手に取って見ることができる。

 Nゲージは7レーン、HOゲージも1レーン。自前の「車両」走行も可能(1時間あたり金と月は400円、その他は800円)。ジオラマ制作教室も随時開いている。入場無料。運営にあてるための寄付を募っている。

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 あだち・かつとし 仙台市で生まれ、小中学生時代を総社市で過ごす。岡山市の大手運送会社に20年勤めて脱サラし、市内でアンティークショップを始める。2015年に総社市に戻り、店も移す。昨秋には空き家の片付けやリノベーションを請け負う事務所「空き家の想夢利絵(ソムリエ)」を設立。市の空き家対策にも協力している。

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