倍サイズのサクラマスの養殖成功 富山・入善町や近大
サクラマスを2年で通常の2倍のサイズに育てて、年間通じて出荷できる養殖に成功したと、入善漁業協同組合(富山県入善町)や近畿大水産研究所富山実験場(同県射水市)、入善町が発表した。町内の飲食店に40匹を提供し、今月中にも試験販売するという。
養殖に使うのは、通常より1年短い2年で成熟する遺伝的性質を持つサクラマス。このタイプは秋に産卵すると、孵化(ふか)した後、翌々年の初夏から成熟が始まっていくが、それに伴って肉質が落ち、成長が止まるという。
そこで、染色体を操作して「全雌3倍体」という、成熟せずに成長を続ける個体を作った。さらに、入善海洋深層水活用施設で、低温と高温の海洋深層水を混ぜて、サクラマスが好む15度前後の海水を供給。夏バテなどのストレスを受けない環境で育てることができるようになった。
これらの技術によって、通常の出荷サイズの約2倍(3~5キロ)まで育てることに成功。出荷も従来は肉質が落ち始める初夏までだったが、通年で可能になったという。
富山県の名産品「マスずし」にも使われるサクラマスだが、県内でまとまった遡上(そじょう)が見られる神通川でも近年は1トン程度の漁獲量で、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。
入善漁協など3者は2016年12月から研究を開始。18年10月には入善海洋深層水活用施設で孵化して成長したサクラマスから採卵・孵化させる「完全養殖」に成功している。
家戸敬太郎教授は「冷温両方の海洋深層水が使えたことが大きい」と話した。車正利同漁協理事は「販路が開拓できれば、水槽を増やす計画も検討できる」と期待を寄せた。(高津守)
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