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 江戸時代から愛知県津島市の郷土料理の食材として親しまれてきたものの、平成の半ばごろに消えた「津島麩(ふ)」。「地元の食文化を後世に伝えたい」と考えた市内の業者が、かつて製造に携わった人の協力も得てよみがえらせ、今月から販売を始めた。

 津島麩は生(なま)麩の一種。伝承によると、江戸時代の寛政年間(1789~1801)に生み出され、藩主にも献上されていたという。

 小麦粉のたんぱく質グルテンでできており、直径4センチほどで、味は付いていない。吸い物やうどん、茶わん蒸しなどに入れると、汁を吸って膨らみ、歯ごたえがある。

 30年ほど前、最後まで残っていた店が廃業。約15年前に市外で作っていた食品会社もやめたことで姿を消したという。

 よみがえらせたのが加藤義隆さん(56)。創業百六十余年、糀(こうじ)屋の7代目で、手作りの糀、みそのほか、甘酒やプリン、シフォンケーキを扱っている。津島麩は子どもの頃に食べ慣れた食材で、数年前から製法を探っていた。

 2年前、廃業した店で作っていた70代の女性と偶然出会い、作り方を教わった。この際は硬くてうまくできず、諦めかけた。

 今年になって、約15年前まで作っていた食品会社で働いていた女性(71)と知り合い、アドバイスをもらって完成までこぎつけた。

 製法は①グルテンの塊をちぎってはまるめる②塩水に漬ける③鍋に入れ、湯で1時間煮る。アドバイスした女性は「ゆで方が難しいという記憶があった」。加藤さんは、「簡単にみえるが、それぞれの工程でコツがあるので難しい」と言う。例えば、ゆでている時はかき混ぜたり、ふたをしたり、温度調整をしたりと手間がかかる。

 夏以降、たびたび試食会を開き、高齢者を中心に「懐かしい」と大きな反響があった。このため販売も始めることにした。2日から、10個入り1パック(税抜き380円)で売っている。市内の末廣寿司では割子弁当(税抜き1300円)に麩の天ぷらを入れ始めた。店主の野口佳男さん(53)は「いい出来で何よりも地元の食材。これからも使いたい」。「給食に使いたい」と打診もある。

 加藤さんは「もうかるものではないが伝統の食材を伝える意義がある。1人では大変なので製法を共有し、製造してくれる仲間も募りたい」と話している。問い合わせは糀屋(0567・26・8338)へ。(臼井昭仁)

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