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 新型コロナウイルスの影響で県外へ修学旅行に行けなくなった多くの小学校が、大分県内の戦争遺跡を訪れている。初めて修学旅行を受け入れたところもあり、平和教育に携わる関係者は「子どもたちに戦争は身近な場所でもあったことを知ってもらえる」と歓迎する。

 戦時中、艦上爆撃機などの搭乗員を養成した宇佐海軍航空隊があった宇佐市。市内には軍施設や空襲跡地などの遺跡が20カ所以上残る。市は平和学習や平和ツーリズムでの誘客をめざし、保存や活用に力を入れてきた。

 11日、大分市の明治小学校の6年生5クラスが、軍用機を空襲から守るために造られた城井(じょうい)1号掩体壕(えんたいごう)を訪れた。市教育委員会の安田晃子さん(62)が宇佐から特攻隊員として出撃し、戦死した154人の名前が刻まれた碑の前で語りかけた。「20歳前後の若者がなぜ夢をあきらめ、命を落とさなければならなかったのか。みんなに考えてもらえたらうれしいです」

 明治小は当初、1泊2日で長崎市や長崎県島原市を回り、原爆資料館などを見学する予定だった。ところがコロナ禍で県外への旅行がとりやめになり、日帰りで宇佐市を訪れた。

 児童たちは事前に宇佐市を含めた戦争について学び、準備をしてきた。上田蒼太さん(12)は「県外に行けなかったのは少し残念だけど、知らなかった宇佐のことがわかってよかった」。

 宇佐市教育委員会社会教育課によると、今年度、修学旅行や社会見学で市内の戦争遺跡を訪れる小中学校は予定を含めて約120校で、前年度の約50校から大幅に増えた。ほとんどが県内の小学校で、北九州市など県外もある。宇佐市側は職員がガイドをするほか、市平和資料館で大分市の空襲映像を上映するなど学習の手助けをしている。

 佐伯市の佐伯海軍航空隊兵舎跡地に建つ「市平和祈念館やわらぎ」にも、別府市や宇佐市から27校、約1200人が修学旅行などで訪れた。昨年度は佐伯市内の小学校が平和学習で来ただけだったという。スタッフの高畑裕さん(63)は「引率の先生の中には『県内にもこんな戦争の跡や歴史があったんですね』と驚く人もいる」と話す。

 県内が旅行先となったことで、新たに注目された戦争遺跡もある。日出町大神(おおが)地区には戦時中、人間魚雷回天の訓練基地があった。その跡地の保存や隊員の慰霊を続ける「大神回天会」の魚住修三代表(86)は、長い活動の中で初めて修学旅行生を受け入れた。

 その数は宇佐市や津久見市から21校。地元小学校の校長だった魚住さんは「広島や長崎だけが教材になっているが、いまの平和は身近な場所で命がけの戦争があった結果だということを子どもたちに伝えたい」と話す。(大畠正吾)

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