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 新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークを活用した在宅勤務が広がりを見せた。首都圏ではオフィス縮小の動きがあり、地方勤務を希望する人も増えている。県内でも移住者を呼び込もうと、テレワーク施設の整備が進んでいる。福島県へ移ってくる人は増えていくのだろうか。

 会津若松市から車で約1時間。三島町の山あいにこのほど、テレワークの体験施設「ワーク・ラボ早戸本村」がオープンした。会津地方の木材の活用を手がける団体「IORI倶楽部」が、築50年の2階建ての住居兼蔵を改修した。

 住居スペースや事務作業部屋、打ち合わせスペースがあり、WiFiも完備する。首都圏の企業に声をかけ、1棟貸し切りで1週間以上、働きながら生活してもらう。

 只見川沿いの霧幻峡の渡しや早戸温泉など地方の魅力がたっぷりだ。滞在中、林業や農業の体験をしてもらい、地元の人と交わる場もつくる。地域の問題解決や、新たなビジネスにつなげる狙いもある。

 改修などにかかったのは約1500万円。県の遊休施設活用補助金から約600万円の助成を受けた。同倶楽部の金親丈史さん(55)は「空き家などを活用してテレワーク施設を増やし、移住者を増やしていきたい」と話す。

 県の補助を受けて生まれたテレワーク向け施設は2018~19年度に計7カ所。今年度も3カ所で整備が進む。

 磐梯町にできた「LivingAnywhere Commons」は、観光を楽しみながらテレワークで働くワーケーションの施設。国見町の「コラーニングスペース アカリ」は昨年10月に倉庫を改修し、イタリアンレストランやラウンジもある。働く場だけでなく、多目的なテレワーク施設が増えている。

 県は9月、県外の企業を対象にサテライトオフィス開設支援補助金(上限500万円)の制度を始めた。同時にテレワーク体験支援補助金も設けた。

 県外の人が県内のコワーキングスペース(共用オフィス)などで仕事をすると、宿泊費と交通費などを1人あたり最大30万円補助する。県地域振興課によると、これまでに予想を上回る57人の利用があった。

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 内閣府が6月に行った調査では、テレワーク経験者の4人に1人が地方移住への関心が高くなったと答えている。県内でもテレワークを使って県外の会社で働く人が出始めている。

 仙台市のコンサルタント会社に勤める郡山市の佐々木星亜(ほしあ)さん(32)は、5月から通勤をやめて同市のシェアオフィスで仕事をするようになった。

 営業では県内外へ出掛けるが、事務作業はフリースペースで机に向かう。以前は見積もりや予算を紙で出していたが、すべてパソコン上でやりとり。社内会議もオンラインを使ってここで出ている。

 妻と幼い2人の子供がいる。片道約2時間かけていた通勤時間が有効に使え、子供と遊ぶ時間も増えた。「仕事に支障はないし、高いビルを見るより高い山を見る方が落ち着きます。地方で仕事をする人は増えていくと思う」と話す。(田中基之)

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 地域おこし協力隊をもつ県内の自治体へ助言をしている弘前大大学院の平井太郎准教授(社会学)の話

 テレワークを活用した地方への移住が広がっていくかは、懐疑的にみている。テレワークが可能なのは知識産業や管理業務などに限られ、企業や行政機関もテレワークを受け入れる業務体系ができていない。まだ、ごく一部にとどまっている。

 テレワークで人を呼び込もうと、多くの自治体が力を入れている。ただ、地方移住を検討している人は教育や医療面に心配がある。暮らしの基盤が整っているか、地域の魅力やどういうライフスタイルなのか、顔が見えるかたちで伝える必要がある。

 福島県は首都圏と近いし、冬はスキーができ、夏は涼しいといった魅力もある。「充実した生活ができています」という例をアピールすべきだ。

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