車イスの女性、SUP挑戦 「活動する姿知ってほしい」

石橋英昭
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 宮城県柴田町に住む岩城一美(ひとみ)さん(45)は、この秋初めて、水上スポーツに挑戦した。ボードに乗ってパドルでこぐ「SUP(サップ)」だ。1時間ほど格闘し、やがて川面をすいすいと滑り出す。両足が動かない車イス生活者でも、できることがまた一つ、見つかった。

 名取市閖上にSUP教室ができたことを知り、連絡をとった。夫婦で教室を経営する白土博子さんが、体の状態を丁寧に聞きとり、「大丈夫ですよ」と快く受け入れてくれた。

 10月の秋晴れの日曜日。

 介護タクシーで到着すると、いきなりインストラクターに「一人乗りでやってみましょう」と言われた。

 「え???」

 誰かが後ろでこいでくれて、自分は水上の気分を味わうだけだと、甘く考えていた。顔がこわばり、心臓はドキドキ。水に落ちたらどうしよう。

 「一人でやった方が楽しいよ」。博子さんがこう声をかけ、ドンと背中を押した。車イスからボードに乗り移り、抱えてもらって名取川へ。水に乗った瞬間、思いのほか安定していることがわかった。

 あとはおなかの力の入れ方と、パドルのコツをつかむだけ。いつのまにか「もっと速くこぎたい!」と思っていた。澄んだ水、川から見上げる空の広さ。閖上の街の復興ぶりにも、感銘を受けた。

 6年前まで、岩城さんは4人の子育てに飛び回る元気なママだった。

 勤務先の労災事故で脊髄(せきずい)を損傷し、下半身不随に。最初は車イスでの家事に慣れるのに、精いっぱいだった。2年前、車イスで世界一周をしたという若者の講演を聞きに、東京に出かけた。その場で車イスの10人ほどと会い、「こんなに仲間がいるんだ」と驚いた。

 挑戦はそこから始まった。誘われて、車イスで山中のキャンプに出かけた。社交ダンスやボクシング練習、両腕だけに頼るボルダリングも経験した。健常者が一緒になった車イス街歩きなどを主催する、一般社団法人「WheeLog(ウィーログ)」(東京)の活動にも加わった。公共交通機関を使いこなし、月2、3度はひとりで上京する。

 岩城さんが気になるのは地元宮城でまだ、街で車イスの人を見かける機会が少ないことだ。「健常者と障害者が当たり前に一緒に遊び、活動する。そんな私の姿を多くの人に知ってほしい」と思う。

 やりたいことをやる、素晴らしき人生――。岩城さんはさっそく、次のSUP教室の予約を入れた。石橋英昭